鳥飼久裕
奄美で越冬するサシバはどこで繁殖しているのでしょうか。国内なのか、それとも海外なのか? これまで何もわかっていませんでした。それを調べるために、アジア猛禽類ネットワークや日本鳥類保護連盟、日本野鳥の会、日本自然保護協会、奄美の自然を考える会、奄美野鳥の会など、島内外の団体がタッグを組んで、奄美で越冬中のサシバを捕獲し、GPS発信機をつけて追跡調査を行いました。これまでに22羽のサシバのデータが得られたのですが、それらはすべて愛知や長野より東の日本各地(北海道を除く)へと渡っていきました。どうやら奄美で冬を越すサシバたちの生まれ故郷は東日本のようです。

さらにGPSの追跡データから興味深いことがわかってきました。春、奄美から東日本へ向けて旅立ったサシバたちは、4日から2週間ほどでまっしぐらに繁殖地へ向かうのに対して、秋、奄美へ渡ってくるサシバたちの大半は、故郷である繁殖地を出た後、途中で寄り道しながらのんびりやってくるようみたいなのです。なかには繁殖地を出て奄美に到着するまでに3か月近くもかかる個体もいました。つまり、繁殖地を出た後でひと休みする中継地を持っている個体が多いことが新たにわかってきたわけです。また、サシバの渡りの観察ポイントとして有名な伊良湖岬や白樺峠を通過する個体は必ずしも多くなく、逆にすべての個体が九州と四国の間を通過する際、豊後水道南部を横切っていることもわかってきました。
サシバという鷹を守っていくためには、繁殖地や越冬地だけでなく、今後は中継地の保全も重要な対策になると思われます。
