2006年 2月のフィールドノートから

2月7日(水) 龍郷町某所

 奄美大島では冬場、風の吹き込まない沢筋などでリュウキュウアサギマダラの集団越冬が観られる。寒い日には木の枝や葉に垂れ下がるようにして、何頭ものチョウがじっとしているが、少し暖かい日にはひらひらと舞いはじめる。きょうの日中は気温が16℃くらいだったので、リュウキュウアサギマダラにとってはなんとか飛べる条件だったようだ。人が近づくと一斉に飛び立ち、付近を乱舞する。もとよりマダラチョウなのではばたきは悠然としており、総数200頭近くもの美しいチョウがゆらゆらと四囲を飛び回る光景は、さながら夢の国ある。奄美ではチョウのことをアヤハブラと呼び、死者の魂が変身したものと伝えられている。であれば、夢の国というよりも死者の国か。いずれにしても幻想的である。

 しばらくあたりを飛び回ったチョウたちは、陽だまりに着地して、翅を広げて日光浴に励むのであった。

▲ひとしきり舞った後、陽だまりで翅を広げるリュウキュウアサギマダラの越冬集団。

2月10日(金)~13日(月) 沖永良部島

 奄美に移住してもうすぐ丸6年というのにこれまで沖永良部には来る機会がなかった。ようやく一念発起し、ウグイスの調査を主目的に沖永良部を訪れた。

 隆起さんご礁からなる島なので低地の雰囲気は喜界島に似ているが、島で最も標高の高い大山(240m)の山頂付近はそれなりに林が残っている。そして林を取り巻く農耕地には鳥影が濃い。この冬奄美大島には冬鳥が少ないが、沖永良部にはシロハラ、アカハラ、ウグイスなどがかなりたくさんいるようすである。特にウグイスはすでにあちらこちらで囀っており、その密度には驚くと同時に嬉しくなった。ただ、深い森がないためにアカヒゲやヤマガラ、シジュウカラ、コゲラなどがいないのは寂しい。種類数は限定的だが生息数は多い、という離島にときおりみられる傾向がこの島にもあるようだ。

 ま、ウグイス調査のために来たので、ウグイスさえいてくれれば申し分なく、期待以上の成果が出て大満足の4日間だった。次はコノハチョウのいる夏に繁殖ウグイスの調査に来ようっと。

▲沖永良部以南に分布するヒメサザンカ。ちょうど花期で小ぶりの花を観ることができた。
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