奄美のサシバについて 第3回 越冬地での食べ物

鳥飼久裕

 繁殖期のサシバは里山や谷戸のような環境に生息し、そういう場所に多い爬虫類や両生類をよく食べます。では、奄美大島で冬を過ごすサシバたちは何を食べているのでしょうか。奄美群島は亜熱帯気候に属し、温帯域の日本本土よりもずっと暖かいですが、さすがに真冬になるとヘビやトカゲなどの爬虫類は活動が鈍り、見つけにくくなります。両生類のカエルは冬でも活発に動いている種もいますが、ほとんどが夜行性で森林に棲んでいます。昼行性で開けた場所を好むサシバにとってあまりよい食物とはいえません。

獲物を見つけて草地に飛び込んだサシバ。

 実は奄美で越冬するサシバの主な食べ物は昆虫類です。昆虫類も冬は数が減りますが、サトウキビ畑や草地などにはタイワンツチイナゴという日本最大のバッタが一年中います。サシバはこのバッタが好物のようです。奄美で越冬するサシバは、農耕地の電柱やスプリンクラーに止まって鋭いまなざしで地面をにらみつけている場面を見かけることが多いはずです。あれはタイワンツチイナゴなどの獲物を見つけようと目を凝らしている姿なのです。

サシバの好物のタイワンツチイナゴ。
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