2009年 11月のフィールドノートから

*番外編*11月03日-05日 佐渡

 トキプロジェクトに関わっている友人、新潟大学の永田准教授を頼って佐渡で放鳥されたトキを観にいった。
 初日の3日はこの秋一番の寒気が入り、佐渡の最高峰金北山は冠雪していた。新穂地区の広い水田跡では数百羽のミヤマガラスが餌をついばみ、中に2羽、コクマルガラスが交じっている。典型的な日本海側の冬の光景である。最初にトキの馴化ケージを見せてもらい、次に放鳥ケージを見る。昨年の反省を受け今年行ったソフトリリースはいまのところ成功しており、数羽の群れが観られるという。さっそく野生復帰したトキの姿を捜す。この日は8羽の群れが餌場の水田近くの枯れ木に止まっているを遠くからフィールドスコープでのぞくことができた。かつて日本産最後のトキ、キンちゃんをこの佐渡のトキ保護センターのモニターカメラ越しに観たことはあるが、野生化で観るのははじめてである。感激。塒入りまで、かじかむ指をさすりながらじっと見入った。

▲餌場の近くの枯れ木に止まるトキの群れ。このときは5羽。

 翌2日目はまず朝の塒からの飛び出しを観察。朝焼け空の下、朱鷺色の翼を広げて舞うトキは驚くほど美しい。塒には11羽が入っていたそうで、そのうち9羽が昨日と同じ餌場にやってきて、餌を捜しているもよう。その場面は死角になっていて見えないが、ときおり昨日と同じ枯れ木に止まるので、何羽いるか数えることができる。実は放鳥されたトキたちは監視員の人たちによってずっと行動を観察されている。地元のヴォランティアも含め、相当数の人たちでトキプロジェクトが運営されていることを実感する。

 この日は午前中、北端の弾崎のほうまでバードウォッチングに出かけ、ついで中央部の田園地帯に飛来したマガンの群れを観察し、さらに午後。南部の羽茂地区へ移動して、昨年来ここに腰を落ち着けているという2羽のオスのトキを観にいった。この2羽は今年放鳥したトキたちよりも幾分人に慣れているのか、やや近めの場所から観察できた。2羽とも朱鷺色が実に鮮やかで美しい。この色はやはり実物で観たい。

▲田園地帯に舞い降りたマガンの群れ。毎年越冬しているらしい。
▲朱鷺色が鮮やかな昨年放鳥された2羽のオス。

 3日目は午前中、小佐渡の林道でバードウォッチングと紅葉を楽しみ、午後は1羽で単独行動しているトキを捜した。その1羽は意外にも国道にほど近い田んぼで採餌中であった。この時期はどじょうが主な餌らしく、泥の中に長い嘴を差し込んでは、一心に捜している。昨日羽茂で観た2羽よりもさらに近い距離からゆっくりと採餌シーンを観察できた。

 現在放鳥されているトキは26羽。もっと多くのトキたちが佐渡の大空を舞う日が来ますように。

▲採餌中のトキ。長く曲がった嘴を器用に使って餌を捜す。

11月22日 奄美市内海・摺勝

 奄美野鳥の会のメンバーから内海にヒシクイが入っているという情報が入った。ヒシクイならば新潟の福島潟でたくさん観たが、奄美で観るのはまた違う価値がある。ということで、さっそく車を飛ばす。まだ冬鳥がそろいきっていないのか、内海湾にカモの姿は少ない。カルガモが2羽、オナガガモが1羽、キンクロハジロが1羽。それらのカモの横にひときわ大きな体の水鳥が1羽。ヒシクイである。奄美でときどき観られるのは亜種オオヒシクイ。この個体も亜種オオヒシクイのようだ。メヒルギのふもとで休んでいるのがいかにも奄美らしい光景である。

 ここまで来たついでに後背地もざっと見て回る。東城小学校のグラウンドには前のシーズン、マキバタヒバリも入っていたが、まだタヒバリやツグミなどの冬鳥はほとんど渡来しておらず、寂しい限り。東仲間から川内、摺勝にかけては広い農耕地になっているので、車でゆっくり観察する。春先にはシロハラクイナがよく鳴いていたが、いまは姿を見るのが難しい。ホオジロ類がまだあまりきておらず、ときおり草むらから聞こえるのはウグイスやノゴマの地鳴きのみ。と、突然、車のすぐそばにノビタキが飛来し、しばし愛嬌のあるしぐさで楽しませてくれた。

▲小さくてわかりづらいですが、ヒシクイです。
▲車のすぐ脇に止まってくれたノビタキ。
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