鳥飼久裕
奄美群島では毎年10月になると、ピックィーとよく響く声を耳にするようになります。冬の使者、サシバが越冬のために奄美群島へ渡ってくるのです。

奄美には「ピーちばヒュー」という言葉があります。ピーというのはサシバの鳴き声のことで、ヒューというのは魚のシイラの方言名です。サシバの声が聞こえる時期になればシイラが釣れるようになるという意味で、サシバの到来が奄美の島民の暮らしに、文化として根づいていることがわかります。

島民はサシバのことを「タハ」と呼んできました。タハとはタカのこと。トビなどの猛禽がいない奄美では、鷹といえばサシバを指します。それくらいサシバは島民にとって身近な鳥でした。サシバの渡りの一大中継地として知られる宮古島では、近年までサシバを捕まえて、じゅうしい(炊き込みご飯)などにして食べていたそうです。奄美にも鷹飯という幻の料理があったという話は聞いたことがありますが、それほど一般に普及していたわけではなさそうです。味が気になりますが、郷土料理の鶏飯ほどおいしくなかったのかな。