2004年 8月のフィールドノートから

8月1日(日)~2日(月) 喜界島

 奄美大島ではウグイスは繁殖していないのに、すぐお隣の喜界島では普通に繁殖しているという。その話を聞いたときから、一度夏の喜界島へ行って、繁殖ウグイスのバンディングをしたいと思っていた。というのも、沖縄島で繁殖しているウグイスが従来考えられていたように亜種リュウキュウウグイスではなく、亜種ダイトウウグイスである可能性が濃厚になったためだ。果たして奄美で繁殖しているウグイスは……? 今回は勝山さんと岩元さよ子・みら親子にもご同行いただき、初めての喜界島行きがかなった。

 喜界島は中央部に百之台という標高200mの台地があるが、それ以外は全島平坦な、隆起サンゴ礁からなる島である。目につくのはサトウキビ畑ばかりで、その合間にガジュマルやススキなどの生えたブッシュがある。ウグイスはこのようなブッシュを好んでいるようで、あちらこちらからジャッジャッという地鳴きが聞こえる。繁殖はひと段落ついたところなのか、さえずりは聞かれない。1日は喜界島の中心集落である湾の郊外の中里で網を張る。ウグイスの声をコールバックしながら待つと、目の前をオオゴマダラがゆったりと飛んでいく。喜界島はこの蝶の北限生息地でもある。しばらくオオゴマダラを追いかけていると、メジロやサンコウチョウがかかる。さらにしばらく待って、お目当てのウグイスも。全身に黄色味が強い幼鳥だ。幼鳥なので翼式もはっきりしない。標識した後、計測を行い放鳥。その後も2羽のウグイスがかかったが、いずれも幼鳥だった。

 2日は百之台に場所をかえて、網を張る。ガジュマルの木陰ではスズメやメジロがよくかかるが、ウグイスも4羽捕獲することができた。しかしながらどういうわけか、ことごとく幼鳥なのだ。幼羽がぼろぼろの個体や換羽中の個体ばかり。結局今回は1羽も成鳥を捕まえることができなかった。これだけでは亜種の特定などできない。時期をかえてもう一回来島することを心に期して、島を後にしたのだった。

▲大きくて美しいオオゴマダラ。ランタナで吸蜜。
▲喜界産ウグイス。オス幼鳥で全体に黄色味が濃い。

8月22日(日)笠利町大瀬・宇宿

 きょうは奄美野鳥の会のミフウズラ探鳥会当日である。ミフウズラは笠利町に広がるサトウキビ畑を中心に一年中生息しているのだが、秋から春にかけてサシバやチョウゲンボウが滞在している期間中はなかなか姿を見るのは難しい。ゆっくり観察するには夏場の早朝や夕暮れ時が最適なのだ。この時期であれば父親がヒナを連れている場面に出くわすこともよくある。朝7時、探鳥会に集まった参加者は3台の車に分乗して出発、サトウキビ畑の間の農道をゆっくり進みながら探す。出やすいのは未舗装の農道脇の雑草の陰や刈り終わったサトウキビ畑の際の辺り。じっくり探すと、いるいる! 幼鳥も観られて、参加者は大満足のようす。

 干潟ではぼちぼち秋の渡りがはじまっている。ムナグロやアオアシシギの姿に混じってクロツラヘラサギが1羽。この個体、どうやら7月はじめくらいまで観察されていた若鳥と同一個体のようで、一時期行方不明になったものの、奄美周辺のどこかで越夏していたもよう。越冬地でぜひ仲間と合流してもらいたいものだ。

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