2003年 4月のフィールドノートから

4月7日(月) 大和村フォレストポリス

 フォレストポリスはあなどれない。昨日のオオトラツグミの追加調査の後に高さんがここでクロウタドリを観たのだ。去年の探鳥会(5月)ではオウチュウが出ているし、一昨年の探鳥会の下見(6月)にはブッポウソウも確認している。湯湾岳の北側山麓に当たるこの福元盆地は定期的に調査すれば、かなり多くの鳥が去来しているのかもしれない。

 それにしても昨日は残念だった。渡り前に集結したツグミと、8羽のシメを観て満足して引きあげた後にクロウタドリのおでましとは! 悔しいので今朝も朝6時から来ているのだが、やはり、絶好の渡り日よりであった昨日の晴天で飛んでいってしまったのであろう。ツグミも少ないし、目当てのクロウタドリは影も形もない。

 このまま帰るのもしゃくなので、水辺の広場をのんびり散歩する。明らかな移入種でそれだけ1本妙に目立つユーカリの高木はいかがなものかと思うが、その木は鳥たちの休息場としては丁度よいらしく、ツグミ、シメ、イカル、キジバトなどが群れている。そこへオーストンオオアカゲラがやってきて、垂直に駆けあがってはエサを探している。向こうから聞こえるへたくそなさえずりはアオジである。渡り前に早くもお歌の稽古である。真っ白なナガサキアゲハのメスが美しいのでビデオカメラを向けていたら、背後からポンポンポンと何か叩くような音が。ここで繁殖しているらしいシロハラクイナの求愛だろうか。

▲個体差はあるが奄美産のナガサキアゲハのメスは白くて美しい!

4月10日(木) 龍郷町秋名

 秋名ではもう田植えが始まっている。きょうのようなよく晴れた日は農作業にうってつけなので、あちらでもこちらでも田植えの光景が。こうなると水を張った泥田の中へは鳥は入りづらく、渡ってきたばかりで羽がまだ色づいていないアマサギが恨めしげに作業を見守っている。

 近くの畑でやたらと鳥が飛び回っているので近づいてみると、そこでは小さな昆虫がたくさん発生しているらしく、いろんな鳥たちがその虫を追いかけているのだ。セッカは小柄な体を生かして、パッと飛びつく、キセキレイは抜群な運動神経で追いまわしている。夏の装いに衣替えしたノビタキはフライングキャッチなどお手のものであるが、ホオアカまでが空中で巧みに虫を捕まえるのには少々びっくりする。渡りの日も近いので、少しでもたくさんの栄養を摂りたい一心なのだろう。

▲お気に入りの見張り台から虫を狙うノビタキ
▲ホオアカも負けじと虫が飛び立つのを待っている。

4月28日(月) 龍郷町秋名

 春の渡りのピークは過ぎてしまったのだろうか。秋名の鳥影は薄い。遠くの山すそからアカショウビンやサンコウチョウの声が聞こえるので、すでに夏鳥の季節なのかもしれない。

 昨日の夕方からバンディング。昨夕はホオアカが1羽、今朝はセッカが1羽という寂しい成果である。両日とも天気がよく、肌がちりちり焼けるような強烈な直射日光が降り注いでいる。農家の人も農作業を休む水田には鳥もほとんど姿を見せず、かろうじて1羽のセイタカシギが長い足を折り曲げて、丈が伸びてきた稲の間でさかんに採餌しているだけである。あとは数羽のバンとセッカ。のどかというより、けだるげな午後。

 夕方になり、日がかげるといきなり涼しく、過ごしやすくなる。リュウキュウヨシゴイやジシギ(チュウジシギだと思うのだが)の活動が活発になる。なにかかかっていないかとかすみ網を見回ると、赤い鳥を発見。ヒクイナが長い足をからめてひっかかっていた。臆病なこの鳥を間近で観るのは初めての経験。

▲血のように赤い虹彩が印象的なヒクイナ
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