2003年 3月のフィールドノートから

3月12日(水) 中央林道など

 新緑の季節が到来。林道はいますがすがしい緑に包まれている。シマウリカエデの緑っぽい花、アオモジの花が終わって伸びてきた葉、古葉の重たい深緑の先から伸びたスダジイのみずみずしい若葉。ひと口に緑といっても千差万別。そこが面白い。新緑の森を支配するのはは緑ばかりではない。アカメガシワやタブノキの若芽は赤いし、シロダモの新芽やクロバイの花は白い。林道に舞うジャコウアゲハやカラスアゲハは黒。美しい春の森のハーモニーが始まっている。

 何時間も林道ドライブを満喫した後、最後に赤崎の少年自然の家に行ってみる。ヤツガシラが3羽飛来しているとのことだが……いたいた。玄関前の芝生で2羽のヤツガシラがさかんに餌を探している。春の渡りも始まったのだ。

▲なかなか冠羽を広げてくれないヤツガシラ。

3月21日(金) 名瀬市うどん浜公園

 名瀬市の市街地にあるうどん浜公園にヒレンジャクとキレンジャクが飛来しているという話を聞いたのはオオトラツグミの一斉調査の前日、15日のことだった。その公園は野鳥の会の事務所から歩いて5分の至近距離、さっそく行ってみたがヒ7羽は確認できたものの、キは確認できなかった。以来毎日通うもなぜかキレンジャクには振られつづけ、ようやく19日にその姿を双眼鏡で望むことができた。

 並べて観察するとヒレンジャクとキレンジャクの違いがわかって面白い。体の色は尾っぽの先の緋色と黄色以外にも微妙に異なっていて、風切りの配色も違うし(ヒは紺が目立ち、キは白が特徴的)、体全体の色合いも違う(ヒのほうが赤味がかっている)。体の大きさはキのほうが大きく、並んでアンテナに止まっている際にキがヒをいじめるシーンをしばしば見かける。

 本日は久しぶりに青空がのぞき、絶好の撮影日和。愛嬌たっぷりにポーズを決めてくれる両種を狙って、まだまだ慣れないデジスコを向ける。30カットくらい撮って、なんとか見られる写真が数カット。ふう。

▲右から2羽目がキレンジャク、他はヒレンジャク。尾っぽの先の色で一目瞭然。

3月31日(月) 笠利町大瀬海岸

 バンディングを始めて、初めての体験。自分が標識したのではない鳥がかかったのだ。再捕獲の鳥は3つに分かれていて、半年以内(1シーズン以内)に同地で捕まった個体をリピート、それ以上の間を空けて同地で捕まった個体をリターン、5キロ以上はなれた場所で捕まった個体をリカバリーという。バンダーの楽しみはリカバリーの鳥を捕まえること。どこか別の場所で自分ではない人間が放した鳥が捕まるなんて、実にロマンチックではないか。

 捕まったオスのアオジにつけられた足環は環境庁時代の古いリングである。昨年からの新人バンダーのボクが持っているのは新しい環境省リングなので、このアオジは少なくとも今シーズン、自分で標識した個体ではない。奄美大島在住のバンダーはおらず、初リカバリーかと期待が膨らんだ。アオジといえば、夏の北海道で、あるいは渡りの時期に日本各地でバンディングされている鳥である。足環の番号を読み取り、どこで誰が放した鳥かと山階鳥研に問い合せたところ、このアオジはトカラ列島中之島在住のバンダー小倉さんが、99年の3月21日に奄美大島に来て、同じ大瀬海岸で放鳥した個体であることが判明した。残念ながら初リカバリーは逃したが、初リターンでも十分嬉しい!

 このアオジ、少なくとも4年間は冬場この大瀬に通っている可能性が高い。そう思うだけで、愛しさがこみあげてくるのであった。

▲これが記念すべき初リターンのアオジ(オス成鳥)