2010年 4月のフィールドノートから

4月6日 奄美市名瀬

 名瀬市街地を流れる新川にカンムリカイツブリが入ったという連絡をもらった。3月末あたりからちらほらと出てはいるが、新川ならば目と鼻の先である。ひとっ走り駆けつけてみたが、どうやら干潮らしく川の水量があまりない。ではと名瀬港をのぞいてみると、案の定防波堤近く水面をのんびり泳いでいる。カメラを構えると気配を気取られたようで、慌てて潜水し、しばらくして20mほど先に浮かび上がってきた。そっと近づくと、また潜る。今度はこちらが先回りして20m先で待っていると、予想は見事的中し、目の前に姿を現した。あまりに近くに人がいてどう対応してよいかわからないようす。その間に夏羽の美しい姿を何枚か写真に撮らせていただいた。

▲あまり警戒せずに潜水と浮上を繰り返していたカンムリカイツブリ。

4月18日 加計呂麻島実久&諸鈍

 8時から10時、加計呂麻島の実久林道で探鳥会を行う。加計呂麻島にチップ工場ができ、35年で同島の西側47%の森林を伐採するという計画が持ち上がったのが1月の末。以来、この島の住民の皆さんが中心となって署名などの反対運動を繰り広げ、チップ工場建設は一旦中断になっている。ただし完全断念ではないので、いつまた工場再建の話が持ち上がるかわからず、事態は予断を許さない。今回の探鳥会は、「伐採に反対する加計呂麻住民の会」が主催し、奄美野鳥の会がサポートするという形で、急きょ実施にこぎつけた。実久林道は最初にマツクイムシ被害が入ったところであり、リュウキュウマツはすっかり枯れ木となってしまっているが、スダジイを主体とする常緑広葉樹林は健在であり、アカヒゲの生息密度が高い場所である。探鳥会を開始して早々、そのアカヒゲがすぐ近くで美しいさえずりを披露してくれた。ふだんはあまり鳥に接することのない参加者も熱心に聞き入っておられ、説明にも勢い力が入る。アカヒゲは姿こそ観られなかったもののその後何度も美声を聞かせてくれたし、おまけに今季初認となるサンコウチョウの舌足らずな鳴き声も聞けて、満足のいく探鳥会だった。

 探鳥会終了後は実久から諸鈍へ移動し、のんびりひとりでバードウォッチングを楽しむ。車を停めた長浜公園でいきなり5羽のコホオアカが迎えてくれる。なかに1羽アオジが交じっているが、頭部は完全にグレー。どうやらシベリアアオジのようである。水田に移動すると、ツバメチドリ、ダイゼン、タカブシギ、チュウサギ、コサギ、アマサギなどの姿が散見される。稲穂の伸びつつある水田と雑草の伸びた休耕田の間の水路で、ヨシに擬態して頸を伸ばしたサギと目が合った。リュウキュウヨシゴイかな、と思って双眼鏡を構えたとたんにそのサギが飛び上がる。ブドウ色の頭部に青灰色の背中、それ以外は全身が白い夏羽のアカガシラサギである。飛び込んだ茂みに双眼鏡を向けると、もう1羽いる。あれだけ派手な衣装をまとっているのに、それと知らないとまず見つからない引っ込み思案のサギである。

▲コホオアカを5羽の群れで観たのは初めての経験。
▲あぜ道でゆったり休むツバメチドリ。結局一度も飛び上がらず。
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