2008年 7月のフィールドノートから

7月13日 奄美市金作原

 奄美の冬虫夏草の第一人者である藤本さんと沖縄から来られたゲッチョ先生こと盛口満さんが冬虫夏草探しをされるというので、同行させていただく。冬虫夏草には出やすいポイントがあるらしく、その場所まで急斜面をくだる。ポイントに着くなり、ふたりは地面にはいつくばるようにして、冬虫夏草の探索開始。「あった!」と藤本さんの声。さっそくアマミセミタケを見つけたようだ。セミの幼虫に寄生する菌であるが、もろくてくずれやすいので、掘り出すのは困難とのこと。しかしよく、このにょろっと伸びた子実体だけから識別できるものだ。感心していると、「ありました!」と今度は盛口さんの声が。こちらで見つかったのは、やはりセミの幼虫につくアマミハナベニタケというものらしい。これは比較的掘り出しやすいということで、盛口さんが挑戦。慎重に周囲から掘り起こしていき、ほどなくして奇主のセミの幼虫らしき塊が出てきたが、もはや全身に菌糸が回っており、かろうじて外形が想像できるだけ。この菌はツクツクボウシタケと近縁というので、この原形をなくした幼虫はオオシマゼミかもしれない。

 それにしても冬虫夏草探しのなんとも地味なことか。地面近くに視線を落として、ひたすら探すのみなのだ。慣れない私はひとつも探し出すことができず、見つけたのはヒナノシャクジョウのかわいらしい花だけだった。

▲アマミセミタケの子実体。これを暗い林床で見つけ出すのはそれなりの経験と勘が必要。
▲掘り出されたアマミハナベニタケ。下部の塊の部分がセミの幼虫だったところ。
▲自分で見つけたヒナノシャクジョウ。ひとつ見つかると、次々に見つかる。

7月20日 瀬戸内町デリキョンマ崎

 連休を利用してやってきた昔の会社の後輩、長い夏休みをとって滞在している小学校から高校までの旧友たちが美しいサンゴを観たいというので、シーカヤックで大島海峡を横断し、加計呂麻島のデリキョンマ崎へ行ってみた。着くなりマスクとフィンをつけてシュノーケリングをはじめる友人たちを尻目に、私はひとり金魚網を持ち、干潮で海面から突き出した岩礁へ。海面すれすれまで視線を落として、目的の生き物を探す。波の表面が太陽の光でまぶしく非常に見づらいが、しばらく目を凝らすと水面を高速で移動する白っぽい物体を発見。目指すサンゴアメンボか。瞬時に網を繰り出して捕らえる。意外と簡単に捕まったなと思うと、サンゴアメンボではなくウミアメンボであった。これだけサンゴが残っている場所だからサンゴアメンボがいるのではないかと考えたのだが、彼らが生きるには干潮時に露出する岩礁が少なすぎるのかもしれない。ウミアメンボでも収穫である。引き続き何頭か仕留めて持ち帰った。

▲ウミアメンボのメス(持ち帰って金属トレイに水を張って撮影)。
▲金魚網で簡単にすくえるルリスズメダイの稚魚。
▲こちらはレモンスズメダイの稚魚。