2011年 5月のフィールドノートから

5月16日 奄美市大川河口

 今年は梅雨入りが早く、5月になって雨ばかり。おまけに気温があがらず肌寒い。梅雨冷えのせいなのか、アカショウビンやサンコウチョウ、キビタキなどのさえずりが例年に比べて少なく、山に入ってもなにか物足りない。農耕地のほうはどうだろうと思い、久しぶりに古見方へやってきた。朝7時、大川の浅瀬で餌を探す、コサギとダイサギのそばに暗褐色の色調のまあまあ大きなサイズのサギを発見。おやっと思って双眼鏡を構えるが、時すでに遅く、くだんのサギはすでに飛び去ったあとだった。ヨシゴイやアカガシラサギよりも大きいのでゴイサギの幼鳥かと思うが、なにか別のサギだった可能性もある。車を降りて、川の中を丹念に見て回ると、キアシシギが警戒して鋭い声でピューイピューイと鳴いた。逃げたサギは見つからない。雨が強くなってきたのでいったん引き上げる。

 3時間後、先ほどのサギが気になってもう一度来てみたが、やはり見つからない。午前中の雨で水が茶色に濁り、その中にアオサギが降り立って、餌を探していた。濁っていても見えるのかなという私の心配をよそに、アオサギは苦もなく小魚をキャッチしたのだった。

▲こちらに気づき、警戒して鳴くキアシシギ
▲濁流の中の小さな魚を一撃でしとめたアオサギ

*番外編*5月22日 三宅島

 初めて三宅島に行ったのは1983年6月のこと。この年の10月の噴火で阿古集落が溶岩に呑み込まれ、新澪池が干上がった。さらに2000年の噴火では大量の火山性ガスが放出され、全島民が一時避難する事態となった。そんな大きなふたつの噴火を経て、実に28年ぶりに三宅島へバードウォッチングに出かけてみた。

 まずは阿古地区の溶岩跡の光景に仰天する。三宅島でも特に賑やかだった一帯に溶岩流が押し寄せ、家屋や学校をうめつくしている。新澪池付近の新鼻新山も83年の噴火で一夜にしてできたもの。火山のおそろしさをまざまざと思い知る。ここからは海を隔てて御蔵島が望めるが、間の海上にはたくさんのオオミズナギドリが飛んでいた。

 島の所々には四色のライトからなる回転塔が建てられており、火山ガスの濃度により点灯するライトの色が変わる。この日は警戒レベル2の黄色のライトが点灯。ときおり風に乗って二酸化硫黄の臭気が漂ってくる。三宅島の人々の生活は元に戻りつつあるとはいえ、いまも雄山の火山活動はまったくおさまっていないのだ。硫黄の臭いにうんざりしながら富賀浜へ向かう。浜辺には草原が広がっており、ウチヤマセンニュウの繁殖地になっている。もともと雄山頂上付近の草地に多かったというが、そこが噴火で消失してからは、伊豆岬や富賀浜など、海岸沿いに繁殖地をうつしたのだそうだ。

 さて、いよいよメインの探鳥地である太路池へと向かう。アカコッコ館の江崎さんに挨拶をしたあと、池の周囲に設けられている観察路を歩く。さすがバードアイランドと呼ばれるだけあって、この付近の野鳥のさえずり密度はハンパじゃない。一番多いのがイイジマムシクイ、それにタネコマドリ、モスケミソサザイ、ウグイス、ホトトギスなどの声が加わり、シャワーのように降り注いでくるのだ。アカコッコだけは早朝にしか鳴かないせいで、ほとんど声が聞こえない。奄美でも同じだが、照葉樹林の鳥は姿を観るのが難しい。これだけ鳴いているのに、姿が見えないのはくやしい限りだが、その悩みはアカコッコ館の脇に設けられた水場に行けば解消された。待っていれば、鳥たちが次々に水浴びに来るのだ。水場で張り込み始めたのが夕方で、しかもこの日は曇天だったため、なかなかうまく撮影ができなかったが、森林性の小鳥のほとんどはこの水場で観察できたのだった。

▲1980年の噴火で一夜にしてできた新鼻新山
▲水場を訪れたアカコッコのオス
▲同じくイイジマムシクイ
▲こちらは固有亜種のオーストンヤマガラ

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