2012年 12月のフィールドノートから

12月17日 奄美市金作原

 名瀬から一番近い原生的な森である金作原国有林は今後、林野庁指定の森林生態系保護地域として保護されることが決定した。環境省のほうでも国立公園化の話が進んでおり、こうして幾重もの保護の網をかぶせることで亜熱帯性常緑広葉樹林の貴重な森が守られていくことは喜ばしいことだと思う。ここは森林のモニタリング1000準コアサイトに選ばれており、1ヘクタールのプロットにおいて2006年から継続して樹木の生長具合、樹木の生産量、徘徊性土壌動物の出現数などが調査されている。今回は直径5センチ以上の全樹木に取り付けた金属タグの点検を行った。

 その作業の最中、知人が近くにニホンミツバチの巣があるというので行ってみた。その巣は人目につきやすい樹木の洞に作られていた。12月なので動きはあまり活発ではないのではないかと思ったが、あにはからんや存外元気に飛び回っており、不用意に近づくと羽音をうならせて警告を送ってくる。警戒音は「長くその場にいれば刺しちゃうぞ」という合図なので、いそいそと距離を取り、10メートル程離れたところからビデオで撮影。人が離れて安心したのか、ミツバチたちは思い思いのペースで巣へ出入りを始めた。奄美はこの時期にも花が咲いている。そんな花を探して蜜や花粉を集めに行っているのだろう。

 奄美のニホンミツバチについては、自然分布なのか古い時代に人為的に導入されたのかよくわかっていないようだ。ニホンミツバチというと森林性のイメージが強いが、セイヨウミツバチが日本に入ってくる前は平地にも生息していたと考えられる。セイヨウミツバチによって森林へ追いやられたニホンミツバチだが、全国的にセイヨウミツバチが減少しつつあるいま、平地での復権はあるのだろうか。

▲帰巣するニホンミツバチの働き蜂。冬でも結構活発に巣へ出入りしていた。