2020年 5月のフィールドノートから

5月5日 奄美市名瀬金作原

 今年は夏鳥の渡来が遅いのか、アカショウビンもサンコウチョウも4月の下旬になってようやく確認することができたが、5月上旬になってもあまり数は増えていない気がする。キビタキも少ないな、と思いながら歩いていると、前方から鳴き声が聞こえる。しばらく待っていると、見える場所に移動してきた。まだ成鳥になっていないオスだ。2Sかな。亜種リュウキュウキビタキの羽衣の経年変化についてはまだちゃんとわかっていない。いつしか林道にオオトラツグミの姿があった。成鳥のようだ。観ていると甘えるような声で鳴き、すぐに別の1羽がミミズをもってやってきた。ということは、先に降り立った方はメスで、求愛給餌ということか。メスと思われる個体は翼を震わせながら、オスからミミズをもらっていた。

▲リュウキュウキビタキ。オスの2Sと思われる個体。
▲林道上で甘えた声で鳴くオオトラツグミのメス。

5月12日 喜界島

 全国鳥類繁殖分布調査のために喜界島を訪れた。奄美空港から喜界空港までは飛行機でわずか10分。あっという間に着いてしまう。空港前でレンタカーを借りて、まずは湾の港へ行っている。公園にムクドリらしき鳥がいるなあと思い、双眼鏡で確認すると、なんとキョウジョシギではないか。まったく違う分類群の両社なのに、顔の白い模様や赤い足という配色といいキョウジョシギとムクドリが似ていることに改めて気づいた次第。

 繁殖鳥類ということで言えば、喜界島には奄美で繁殖していないウグイスが高密度で生息している。そのため、ウグイスに托卵をおこなうホトトギスも繁殖している。さらに近年ではモズも繁殖している。一方、奄美大島では普通のシジュウカラやヤマガラは繁殖しておらず、ヒヨドリも極端に少ない。飛行機でたった10分しか離れていない島なのに、鳥類相にこれだけの違いがあることが不思議でならない。

▲肉眼で見たときはムクドリかと思った夏羽のキョウジョシギ。こんなところで餌を探してるから、シギという発想がなかったのだ。
▲喜界島はウグイスの生息密度が高く、そのためホトトギスも多い。褐色タイプは喜界島で初めて観た。
▲モズが定着したのは21世紀になってからと考えられる。密度はそれほど高くない。
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