2017年オオトラツグミ一斉調査 結果報告

24回目のオオトラツグミ一斉調査の結果を掲載しました。調査方法を一部見直して4年目、中央林道でのさえずり個体数は減少しましたが、北部での生息域の拡大・定着傾向は続いています。

第24回オオトラツグミ一斉調査について
~奄美中央林道で54羽、北部・市理原では3羽確認~

 今年も昨年に引き続き、奄美中央林道を中心とした一斉調査とその他の補足調査の2本立てで調査を実施しました。補足調査は主要林道に限定しつつ、周辺地域の一部を加えて調査をおこないました。周辺地域の調査は、今後の生息域拡大を見越しての対策で、龍郷町の市理原地区、笠利町の喜瀬地区、土浜地区、鍋比林道、加計呂麻島の一部で調査しました。

 今年のオオトラツグミ一斉調査は3月19日(日)に奄美中央林道全域やスタルマタ林道、住用ダム線、油井岳林道、金川岳などで実施しました。一斉調査の一日だけで181名の方々の参加をいただきました。これは、昨年の133名より48名も多く、これまでで最も多くの方々にボランティア調査員としてご参加いただいたことになります。この19日の一斉調査の結果、オオトラツグミのさえずり個体数96羽(うち奄美中央林道は54羽)を確認することができました。

 今年の一斉調査と補足調査(ICレコーダーにより調査を含む)を合わせたさえずり個体総数は、昨年の346羽(調査地点数193)よりも少ない、245羽(調査地点数212)を記録しました。今年は調査地点が昨年よりも19地点増えたのですが、個体総数は昨年より101羽少なくなりました。

 長年の継続調査で増加傾向が明らかになるなか、今年は昨年に比べ減少となりました。調査時に雨が降り続き、さえずりの声が聞き取りにくかったことは、減少の一因と考えられます。単年度の結果だけでは、増減の傾向は読みとりにくいので、来年以降もきちんとモニタリングしていく必要があります。昨年初めて2羽のさえずりが確認された北部の市理原地区では、今年はさらに1羽が増えて3羽が確認されました。生息域の拡大・定着の傾向は続いているようにうかがえます。

 これらの結果がわかってきたのも、長年にわたる多くのみなさま方のご協力ご理解があってのことであり、ボランティア調査員として調査に参加されたみなさま、ご支援をいただきました行政や諸団体および個人の方々、調査資金にご寄付いただいたみなさま方に対し、改めて心から深く感謝いたします。ご支援、ご協力ありがとうございました。

特定非営利活動法人 奄美野鳥の会
オオトラツグミさえずり一斉調査実行委員会

●2017年(第24回)オオトラツグミさえずり個体調査結果

調査地  212箇所
確認羽数 245羽
調査員  356人(延べ人数)

●オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果の推移
奄美中央林道その他合 計
199024羽1羽25羽
199440羽14羽54羽
199518羽14羽32羽
199618羽11羽29羽
199727羽14羽41羽
199821羽17羽38羽
1999 調査方法変更28羽72羽
44羽
200025羽36羽61羽
200140羽34羽74羽
200240羽37羽77羽
200343羽61羽104羽
200442羽84羽126羽
200568羽103羽171羽
200647羽118羽165羽
200778羽171羽249羽
200847羽180羽227羽
200951羽225羽276羽
201032羽262羽294羽
201145羽288羽333羽
201259羽296羽355羽
201396羽426羽522羽
201485羽調査方法変更 
215羽300羽
201573羽241羽314羽
2016106羽230羽346羽
201754羽191羽245羽
「奄美中央林道」は、里林道、金作原林道を含む奄美市里(始点)から宇検村大畑出口(終点)までをいい、ルートセンサスによる調査。1998年までは数日かけて調査をおこなったが、1999年以降は同日に一度で調査を行っている。
「その他」は、1990年と1996年は任意観察のみであるが、1994年と1995年、1997年以降は定点観察も行なった。1994年、1995年、1997年以降に比べて、1996年の観察地点はかなり少なく、見落としが多い。2014年以降、奄美中央林道と一部の林道のみにしぼって調査。
*表は、Strix vol.15.1997「.オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果(1996年春)奄美野鳥の会」に1997年以降の結果を加えて作成。

 奄美中央林道での調査では、昨年より52羽少ない57羽の記録となった。昨年がこれまでで最も多く、初めて100羽を超えたことや、今年は風雨の中の調査になったことなどを合わせて考えると、これまでの平均値に近い数に戻ったといえるかもしれない。全調査地域(地点数)では、昨年の193地点よりも19地点多い212地点で調査し、全体で245個体となった。また、昨年初めて2羽のさえずりが記録された市理原地区で、今年は3個体が確認され、全体の個体数は減少したものの、北部地域への生息域の拡大・定着の傾向が続いていることが明らかになってきた。

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