2003年 11月のフィールドノートから

11月15日(土) 曇り 名瀬市古見方

 昨年に比べて、今年は冬鳥の渡来が遅く、数が少ない気がする。数については出そろってみないとわからないが、時期は確実に遅れている。11月も中旬になろうというのにシロハラもアオジもいなくて、寂しい限りである。そんなことを思っていたら、高さんから吉報が届いた。古見方の農耕地にズグロチャキンチョウらしき鳥が来ているとのこと。翌朝さっそく行ってみることに。

 詳しいポイントは聞いていないが、大方予想はつく。この辺りじゃないかなと、注意しながら車を走らせていると電線に小鳥が止まっているのを発見。双眼鏡でのぞくとニュウナイスズメである。オスが1羽にメスが2羽。しばらくそれを眺めていたら、ビンズイの10羽ほどの群れが同じ電線に止まった。続いてハクセキレイ、キセキレイ、さらにはジョウビタキと、この電線は小鳥たちに妙に人気があるようだ。車から降りて、デジスコでニュウナイスズメを狙うことにする。ところが、フィールドスコープにデジカメをセットし、ピントを合わせているうちに、あんなにたくさんいた鳥たちがすべていなくなっている。ま、よくある話なので、落胆することもない。せっかくセットしたからしばらく待とうと、心に決めた。

 待つこと5分。ニュウナイスズメが戻ってきた。デジスコを向けようとしたその瞬間、もっと大きな鳥が1羽飛来した。バードウォッチングも長年やっていると、勘が鋭くなる。双眼鏡でのぞく前から、この鳥こそ目当ての鳥だと直感した。案の定、ちょっと黄色味のある大き目のEmberizaである。フィールドスコープにはデジカメをセットしてあるので、とりあえず撮る。撮る撮る撮る。20枚くらい撮ったところで、デジカメを外し、倍率をあげてじっくり観察する。ズグロチャキンチョウとチャキンチョウのメス(ないしは第1回冬羽)の識別はとても難しい。くだんの鳥は、嘴が太く見え、初列風切の突出は非常に大きく、背中の縦斑ははっきりしないので、おそらく、ズグロチャキンチョウなのだろう(と曖昧な判断)。

▲(おそらく)ズグロチャキンチョウのメスないしは第1回冬羽。

11月16日(日)曇り 笠利町大瀬海岸

 奄美群島復帰50周年記念式典に参加されるため天皇皇后両陛下が来島されており、島内はいたるところ警官や警備隊だらけ。厳戒態勢のものものしさである。基本的にそのての行事には関心がないので、笠利町へ鳥を観にやってきた。僕としては行列になって陛下のご尊顔を拝むよりも、珍しい鳥でも観ていたほうが気が休まるのである。

 宇宿のブッシュで、小声でさえずる美しい声を聞いた。この声、聞き覚えがあるけど何だっけ? そっと近づくとノゴマのオスである。こんな季節に浮かれ鳴き。島でさえずるのをはじめて聞いた。海岸に出て双眼鏡でのぞくと海上保安庁のいかつい艦艇が2隻、浮いている。今夜両陛下は空港に近いこの付近のホテルに泊まられると聞いている。そのための厳重な警備なのだろう。しばらくすると高さんがやってきた。ハマシギの中に数羽のサルハマシギを発見。冬羽のサルハマシギはハマシギとよく似ており、曇天のうえに光線が逆光ということもあって、なかなか識別しにくい。ふたりでスコープをのぞきながらあれこれ言っていると、ふたり連れの警官がやってきた。こんなところ(素人から見たらただの干潟)に望遠鏡や双眼鏡をもった風体の怪しい男のふたり組を発見し、むらむらと職業意識に駆られたに違いない。愛知県警からはるばる派遣されたらしい警官は、遠まわしにボクたちに尋問する。警備の人たちもすることがなくって退屈だったに違いない。高さんがスコープを差し出すと、意外と嬉しそうに干潟の鳥をのぞいていた。

▲ひどくわかりにくいが、サルハマシギの冬羽です。

11月23日(日) 曇り 笠利町大瀬海岸

 きょうは大瀬でバンディング。昨年のいまごろは鳥が多く、たくさんの鳥を捕獲して標識することができたが、今年は本当に冬鳥が少ない。ウグイスくらい簡単に捕まるかと思っていたが、それすらなかなか捕まらず、ときおり網にかかるのはメジロばかり、しかも本土から越冬にきたものではなくリュウキュメジロばかりである。網場の近くにルリビタキが出没。枝先やベンチにとまって、さかんに地面を気にしている。えさを探しているのだろう。待つこと2時間、このルリビタキを捕まえることができ、大喜び。

▲2時間後に捕獲されたルリビタキのメス。
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