2009年 2月のフィールドノートから

2月1日 奄美市宇宿、大瀬、須野、万屋

 天気がよかったので、市理原でのルリカケス調査を終えて、笠利方面へ行ってみる。最初に宇宿漁港へ。敷地の1/3くらいの面積が工事中で、なにやら大きなコンクリート製の物体が置いてある。漁礁だろうか? 目障りで仕方ない。空港に近い側の更地にムナグロとムネアカタヒバリの群れ。珍しい鳥は交じっていないようだ。イソヒヨドリを撮影し、そそくさと大瀬海岸へ移動。ソリハシセイタカシギはもういないが、アカツクシガモはまだいる。そしてツクシガモが2羽になっている。小潮のせいで遠く、双眼鏡だけではあまりよくわからなかった。

 続いて後背地へ。シマアカモズやジョウビタキなどを観ながら、収穫の始まったサトウキビ畑の間をゆっくり車で流していると、電柱から1羽の猛禽が飛び立った。おなじみのサシバであるが……なんかおかしい。慌てて双眼鏡でのぞいてみると、なんと暗色型ではないか。2005年くらいから毎冬この付近に来ている個体らしいが、私はここでは初めて観た。焦げ茶色のボディーに金色のアイリスが映え、実に精悍である。暗色サシバを堪能して空港のほうに向かう途中、休耕田の上をビュンビュン鳴きながら飛び回る4羽の鳥を発見。ヒバリである。本土にいるとごく普通の鳥だが、奄美では貴重。車を停めてそれを観ていたら、なにやらホオジロ科の鳥が視界を横切った。アオジではないと判断して、鳥影の入ったススキの草むらに双眼鏡を向ける。おやおや、シベリアジュリンではないですか。空腹なのか懸命にススキの種を食べている。しかしこのシベリアジュリン、なにかバランスがおかしいなと思ったら、尾羽が全部抜けておりました。相当つらい旅だったのだろうか。しっかり栄養をつけて、無事に渡っていっておくれ。

▲人を恐れずすぐ車の近くまで来たイソヒヨドリのオス。
▲暗色型のサシバは普通のサシバよりも精悍に見える。
▲尾羽の抜けてしまったシベリアジュリンが必死に空腹を満たしている。

2月24日 瀬戸内町篠川

 日本冬虫夏草の会の方々が遠路福島からお見えになっていたので、調査に同行する。調査といっても、林床すれすれまで顔を近づけて、ひたすら冬虫夏草を捜すという、きわめて地味な苦行のようなもの。それだけに見つかったときはうれしい。 過去2回はひとつも見つけられなかったが、今回はアマミタンポタケとクビジロアマミタポタケを発見。冬虫夏草の会の方々はこの他にも、コロモタンポタケ、ハナヤスリタケ、新種かもしれない小さなタンポタケなどを次々と発見されている。これの宿主はすべてツチダンゴという菌類。つまりこの冬虫夏草たちは、昆虫ではなく菌に寄生するのだ。それって冬虫夏草なのかよ、とつっこみたくもなる。菌に寄生する菌、分解者を分解する分解者……なんとも奇妙な話である。

▲自分で見つけたアマミタンポタケ。下部の球状のものが宿主のツチダンゴ。
▲コロモタンポタケ(左)と新種かもしれないタンポタケsp(右)。コロモタンポタケの基部にツチダンゴが露出している。
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