2018年 9月のフィールドノートから

*番外編*9月19日 鳥海山

 新潟でおこなわれた日本鳥学会の大会に参加したあと、ついでなので山形と秋田の県境にそびえる鳥海山まで足を延ばす。かつて渡り鳥の聖地である飛島から日本海越しに眺めた姿が雄々しく、いつか登りたいと思っていたのだ。ちょっと足を延ばすにしては遠かったが、前日のうちに山形県側の登山口、滝ノ小屋まで到達し、小屋で1泊してから登りはじめる。登り始めてすぐに猛禽の姿を確認。この辺りはイヌワシの生息域であるが、明らかに小さい。双眼鏡を合わせると、ノスリであった。出羽富士の異名を持つ鳥海山は円錐型の山容をした単独峰であり、頂上に立つにはただひたすら直登しなければならない。傾斜が急なので上り坂は存外きつく、しばらく登ると顎が出る始末。途中に薊坂という急登の難所があり、ひと休みすると、足元にアザミが咲いていた。なるほどこれが鳥海山の固有種のチョウカイアザミかと写真を撮って、帰って来てから調べると、どうやらウゴアザミという種類のようだ。さらに登って外輪山の尾根に立つと、ようやく山頂(新山)が見えてきた。この尾根筋にはまだイワギキョウの花が咲いていた。外輪山から山頂を目指すにはいったん下らねばならない。そして岩がごろごろの新山を、両手を使いながらよじ登っていく。途中にイワヒバリの群れがいたが、ちょうど両手がふさがっており撮影できなかった。悪戦苦闘しながら登ること20分ほど。ようやく東北一の高峰の頂上に立つことができた。

 下りながらイヌワシが飛ばないか注意していたが、残念ながら飛ばない。しかたがないので、帰路、環境省の「猛禽類保護センター」に立ち寄り、イヌワシの勉強をしてから酒田に向かう。

▲近くに止まったノスリ。
▲もう花期も終盤のウゴアザミ。
▲外輪山から鳥海山(新山)の頂上を望む。
▲まだ咲いていたイワギキョウの花を真上から覗いてみた。