2000年 12月のフィールドノートから

12月15日(金) 晴れ 秋名

 12月の前半は東京に行っており、久しぶりの奄美でのバードウォッチングである。帰りに出水に寄ってこようかとも思ったのだが、2週間近くも留守にし、一刻も早く奄美に戻ってきたかったので、ツルはまたの機会にとあきらめたところ…、秋名になんとマナヅルが一羽飛来しているではないか。

 聞くところによると、10日くらいから来ているとのこと。さすがに大きいこの鳥は地元の人でもわかるようで、あまり騒ぎにならないように、静かに見守っているとのこと。ホームページ上にこの情報がアップしても、どうか追いかけたりしてツルを脅かさないようにお願いしたい。(もちろん、奄美野鳥の会のホームページを見るような愛鳥家にそんな不届きなまねをする人はいないと信じているが。)

 このツルにはなるべくゆっくり奄美で休息してくれたらと思う。それと同時に、仲間からはぐれた気の毒なツルだから、早めに群れに合流してほしいとも願っている。複雑な気持ちではある。

▲単独で飛来したマナヅル。

12月18日(月) 曇り/雨 大瀬海岸

 二日連続で大瀬海岸に来たのにはわけがある。昨日観たヒシクイ3羽をじっくり観察しようと考えたのだ。昨日はカモを観ているうちに、いつのまにか大型の鳥が飛び立ってしまい、双眼鏡でなんとかヒシクイであることを確認できただけであったのだ。その3羽のヒシクイは空港の敷地に降り立ち、以来戻ってこなかった。

 今日はゆっくり探すぞと、フィールドスコープを覗き込む。カルガモ、オナガガモ、ヒドリガモ、ヨシガモ、オカヨシガモ……しかしながらガンの姿はない。また空港か、それともサトウキビ畑のほうか、はたまた飛び去ってしまったのか。

 しかたなく他の鳥を探し始めたところ、白いサギがスコープの視野に入ってきた。冠羽が風になびいている。「ん、カラシラサギ?」と思ったが、足が短いし、嘴が黄色っぽい。カラシラサギの冬羽はコサギ同様黒いはずだ。ということは、こやつはクロサギの白色型だ。まぎらわしい。クロサギは体色も足の色も変化が大きく、注意が必要。

▲人騒がせな(勝手に騒いでいるだけ?)クロサギの白色型

12月22日(金) 晴れ 自然観察の森

 久しぶりに長雲峠の自然観察の森を訪れた。時間は16時。昨日が冬至であったが、一年で最も日の短いこの時期、16時ともなると陽光は力なく、森の中はすでに薄暗い。斜めに差し込む日に林床のヤッコソウが夕焼け色に染まっている。湯湾岳で観たユワンツチトリモチにしても、このヤッコソウにしても、とても花には見えない。寄生植物って実に不思議だ。

 展望台に上り、日没を待つ。17時過ぎに日は沈み、17時半には森に闇が降りてくる。夜行性の生き物たちが動き出す時間だ。さっそく池のほうからコロコロと玉を転がすような声が聞こえてきた。アマミアオガエルだ。鮮やかな黄緑色にくりっとした黒い目が愛らしい。もう恋の季節が始まっており、交接しているものたちもいる。アマミアオガエルは樹上に泡状の卵塊を産むが、それはもう少しあとのことであろう。

 リュウキュウアカガエルも多い。こちらはか細い声でチュルチュル鳴く。この池に限らず最近林道の水溜りには必ずといっていいほどこのカエルがおり、卵も見られる。またこのカエルを好物にしているヒメハブが近くにいるのも毎晩のように目撃している。幼蛇が多いようで、体も小さいし、ハブに比べると見た目の威圧感もないが、やっぱりぞっとする。

▲抱接するアマミアオガエル。
タイトルとURLをコピーしました