2024年 10月のフィールドノートから

*番外編*10月12日~14日 佐渡

 大学時代の研究室の同級生で、佐渡でトキの再導入に携わっているN氏を訪ねる。というのも、今年度末でN氏も新潟大学の教授職を退官となるので、その前に彼に案内してもらって野生下のトキを堪能しようという腹積もり。同じ研究室だった先輩や後輩など4名で佐渡に押し掛けた。
 到着した12日には塒入りを見学。夕陽を浴びて1羽、2羽と塒に入るトキの羽毛は濃い紅色に輝き、実に美しい。とはいえ、秋の日暮れは早く、明日への期待を残して観察は30分ほどで終了。
 翌13日は早朝、塒を飛び出すトキを観察した後、田んぼで採餌中のトキを探す。佐渡は大きな島で、北と南に山地が横たわっているが、中央の国中平野を中心に広大な水田が広がっている。トキがドジョウやカエルなどの餌を食べられるように、米作りは農薬や化学肥料をほとんど使わずに行われ、田に水を引くための水路には魚道が設けられて生き物が田んぼに戻れるように工夫されている。農家の方々の苦労もあって、広い刈田のところどころでトキがのんびり餌を探している姿を見ることができる。野生下のトキの数は600羽を超え、2003年10月に死んだキンを最後に日本では野生絶滅したトキは、見事に復活を果たしたといえよう。今後は能登半島や出雲地方への導入が計画されており、このまま順調にいけば日本の数か所で野外のトキを観ることができるようになるかもしれない。
 最終日14日は前日とは別の場所で塒から飛び出すトキを観察した後、トキの森公園や保護センターを訪れ、再導入の苦労や今後の展望について学ぶ。ずっと携わってきたN氏の詳細な解説付きなのでとてもよく理解できた。
 トキ三昧の成果は、後輩の提案による句会でもって発表することに。
 ということで一句。
  薄紅に刈田を灯す朱鷺の群れ

翼の裏側の紅色が強いので、飛ぶとよくわかる
トキの成鳥。顔面の赤が強く、虹彩も赤い。
トキの幼鳥。顔面の赤が薄く虹彩はオレンジ色。