番外編 1月9日(火)雨~10日(水)晴れ 出水~川内
正月はやはりめでたく鶴でも見ようと、出水にやってきた。前回来たのは1994年1月なので、7シーズンぶりとなる。出水の鶴は保護活動も順調に進み、年々渡来数が増えてきている。今シーズンもまた最高渡来数を更新したようだ。鶴見亭近辺はツル観察の観光客目当ての土産物屋や食堂などの施設ができ、ずいぶん賑やかになった。
1981年に初めて訪れたときには、拡充する前の鶴見亭が田んぼの中にポツンとあるだけで、実に閑散としていたものだ。当時は地元住民にまだツルの重要性が理解されておらず、又野さんの孤軍奮闘という感じであったが、20年を経て、地域ぐるみでのツル保護が根づいてきたのは、たとえそれが観光資源の開発という打算が働いているとしても、ともあれ喜ばしいことであろう。
今回の目当てはソデグロヅルであるが、なんのことはない観察塔の真ん前でのんきにエサをついばんでいる。拍子抜けするほど簡単に、しかも至近距離から観察できる。人を恐れずエサをついばんでいるので、逆にいえばなかなか逃げないわけだ。たまには飛んでくれないと、名前の由来である初列風切の黒色部分が見えない。これでは限りなくシロヅルのようではないか!
出水で、この他カナダヅル、クロヅルなどを観察したあと、川内市の高江干拓にやってきた。ここには毎冬カラフトワシが渡来している。前の94年の訪問は、ツルよりもむしろこのワシが目当てであったのだ。
いつ設置されたのか、ここにも「カラフトワシの渡来地」という看板が立っている。しかしながら鶴は万人受けするが、名前も聞いたことのない鷲では一般人を誘致することは難しい。わざわざここまで足を伸ばすのはマニアックなバードウォッチャーに限られている。
干拓地の中をレンタカーで回っていると、さほど待つまでもなく、カラフトワシが飛んでいる姿を発見。トビがたくさん飛んでいるが、翼の太さと尾の形が違うためにひと目でわかる。ワシの悠々と空を舞う姿は実に気持ちがいい。しばらくするとチュウヒの若鳥も飛び、久しぶりにサシバとミサゴ以外のタカ科の鳥たちを堪能した。奄美大島に住んでいると、トビさえ観られないのが少し寂しいのである。
1月17日(水)曇り 古見方
奄美ではリュウキュウツバメが周年見られる。リュウキュウツバメは下面がツバメよりも黒く汚れた感じというイメージがあるが、実際には個体によってかなりバラツキがあり、飛んでいると、時にはツバメと見まちがえるほど腹部が白い個体も多い。そんなことを考えながらリュウキュウツバメを見ていると、中にとりわけ白っぽいツバメを発見。腹部が白いだけでなく、腰も白いのだ。あ、イワツバメ! 2羽飛んでいる。こんな時期に…ひょっとして越冬しているのかと、『奄美の野鳥』を見ると、イワツバメは載っていないではないか! 迷鳥ということはないと思うので、たまたま写真が手に入らなかったのだろうか? ならば自分がとビデオを構えるが、何しろ動きが速く、とらえられない。そうこうするうちに遠く離れて行ってしまった。
畑の杭にツグミ大の鳥がむこうを向いて止まっている。褐色の背中からシロハラだろうと思って双眼鏡をのぞくと、眉斑が橙色っぽい。一瞬頭の中が疑問符だらけになるが、こちらを振り返ってくれたので、正体がわかった。ツグミの亜種のハチジョウツグミだ。胸から脇腹にかけて赤錆色で、亜種ツグミとはまるで別種のように見える。
1月23日(火)小雨 古見方
朝オオトラツグミの採餌行動を観察。今の時期は日の出の時間が遅いので、観察はラクだ。そのかわり、ほとんど囀らないのが寂しい。
十分にオオトラツグミを観た後、古見方にやってきた。最初に大川をのぞくが、カルガモ、ウ(カワウか?)、バンくらいしか見当たらない。引き続いて川の近くの畑や小湊のほうを回るが、小雨交じりで鳥の影が薄い。あきらめて帰る途中に再度大川に立ち寄ると、オオバンの横に小さな水鳥の姿がある。車を近づけて、観てみるとミミカイツブリであった。雨で増水した川の流れにさからって必死に泳ぎながら、時折潜っては餌を探している。
対岸からだともっとよく観察できるかもしれないと、車を回す。しかしいつのまにか、ミミカイツブリの姿は消えてしまった。近くにカルガモが8羽。いや違う、カルガモ7羽にホオジロガモが1羽だ。ホオジロガモのメスタイプ。しかしながら、嘴の先端が黄色ではなく、白っぽくかすれて、最先端の嘴爪のみ黒が入っている。コスズガモやアカハジロの嘴に近い色合いだ。メスの変り種なのか、多種のカモとの交雑個体なのか? 定かならず。