2008年 4月のフィールドノートから

4月8日 奄美市宇宿漁港&土盛海岸

今日は昼の潮が大幅に引く、旧暦3月3日。海モノの観察にはもってこいの日である。いそいそと磯に出かける。

 途中、喜瀬の集落を通り過ぎようとしたら、大潮のときだけ姿を現すという隠れ浜がすでにその頭を見せていた。ここに渡りたい気もしたが、今日の目的は浜よりも磯。後ろ髪引かれる思いで、あとにする。

▲白く姿を現しはじめた喜瀬の隠れ浜

 途中、宇宿漁港に立ち寄る。オオチドリが一気に30羽ほども入っているという。これは観にいかねばなるまい。

 現場に来てみると、いるいる。警戒心は薄く、車で近づいてもほとんど逃げないし、停めてじっと待っていると、どんどん近づいてきて、その距離はわずかに5mほど。コンパクトデジカメで写真が撮れちゃいました。ありがたみに欠けるなあ。

▲コンパクトデジカメで珍鳥オオチドリを撮影。この個体はもう夏羽のようだ。

 で、本日のメインは干上がったリーフ。大瀬海岸と土盛海岸の間から海に入る。すでにリーフの突端では地元の人たちが潮干狩りをはじめている。果てしなく広がったリーフを物色しながら歩いていると、ジャノメウミウシやケブカガニ、ジャノメナマコなど、けったいな生き物たちが次々に現れる。海の生物ってホント、ヘンテコだよなあ。しかし私の目的はサンゴアメンボ。潮の引いたリーフの先端近くの潮溜まりにいるんじゃないかと期待してきたのに、探せども探せども見当たらない。見つかるのはケシウミアメンボばかりである。潮干帯で一匹のクモを発見。すわ、ミズグモかと驚いたが、知り合いからヤマトウシオグモだと教えていただく。潮の引いたリーフに出てきて、餌を探しているそうな。こんなところにもクモがいるんだね。

▲上顎の長いヤマトウシオグモ。

4月16日 奄美市某所

 環境省から受託しているアマミヤマシギの保護増殖事業の一環として、今年度は3羽のアマミヤマシギに発信機を装着し、行動範囲を追跡している。0時からの調査の途中、立ち往生したアマミノクロウサギの幼獣に遭遇。右のガードレールの下は3mほど垂直に落ち込んでおり、左側には車があるので、進退窮まったようす。このクロウサギはしばし考えるようなポーズをとった後、最終的にはこちらにめがけてぴょこたんぴょこたん走ってきたのだった。なんとまあ大胆な。

▲立ち往生して固まったアマミノクロウサギ。