2010年 6月のフィールドノートから

*番外編*6月13日 立山室堂平

 奄美にいるとまず観ることのできないライチョウを観たくなり、雑誌に掲載する某短編の取材をかねて立山へ。ふもとの芦峅寺までは暑いくらいの天気だったが、ケーブルカーと高原バスを乗り継いで到着した室堂平は一面が雪景色。さすが標高2400mは違う。宿泊は日本最高標高の温泉「みくりが池温泉」であるが、室堂駅から宿まで行く間にも雪渓を渡らねばならず、足元がおぼつかない。宿で荷物を降ろし、周囲を散策。夏山シーズンはまだまだ先で、登山客も観光客もまばらである。歩いていると道路脇のハイマツの下からライチョウのメスが姿を現した。われわれを恐れるふうでもなくすぐ横を通り過ぎていく。と、今度は前方の岩の上にオスが出てきた。こちらもまったく人を怖がらず、2mの距離に近づいても逃げようとしない。携帯でも十分に写真が撮れる珍しい鳥である。

 雪の解けた大地にはミネズオウの可憐な花が咲き、カヤクグリがちょろちょろと動き回っている。その先にはイワヒバリの姿も。高山鳥は人との距離が近くてうれしい。本来、人と鳥との距離はこれくらい近かったのではないだろうか。

▲標高2400mは一面の雪景色だが、ライチョウはすでに夏の装いへと衣替え中。
▲高山植物はなだあなり咲いていなかったが、このミネズオウは五裂の可憐な花を咲かせていた。

6月28日 奄美市三太郎峠

 平年ならばぼちぼち梅雨明けというのに、天気がぐずついている。それでも自然のリズムは正確で、梅雨の花イジュはもうほとんどが散りかけ、初夏の花ノボタンがそこかしこに咲いている。夏の到来だ。夏のカエルといえばオットンガエル。元来は夜行性であるが、夏の行動の最盛期には昼間でも「グホッ」とおじさんが咳き込むような声で鳴く。その鳴き声が聞こえたので、道の脇にあった水溜りを覗くと、水面から上半身だけを出したオットンガエルを見つけた。昼間のオットンガエルは体色を変えるのか、夜に比べてずいぶんと黒っぽい。けだるげな昼のカエル。

▲奄美の初夏を彩るノボタンの花。
▲昼間のオットンガエルはとても黒っぽく見える。