2013年 8月のフィールドノートから

*番外編*8月8日 北海道利尻島

 夏休みをとって北海道は利尻島へやってきた。前回来たときには利尻富士に登ったが、今回は滞在時間が短いので、ポイントを絞って回った。

 おもしろかったのは姫沼。沼に着くなり、聴きなれないセミの鳴き声が通底音のように響いている。説明板によると、この辺にいるのはコエゾゼミとのこと。どこかに止まっていないかときょろきょろしていると、なぜか葉の上に1頭。エゾゼミとコエゾゼミは前胸後部の模様で見分けることが可能だそうだ。その識別ポイントによると、この個体はたしかにコエゾゼミである。

 近くで水音がしたのでなんだろうと目を凝らしていると、前方の木道の上にオシドリの姿があるではないか。暗いが幼鳥のようだ。水音を立てたのも、こいつの兄弟かもしれない。この沼で繁殖したのだろう。

 改めて湖面に目をやると、なにやら黒々とした昆虫がもがいている。放っておくとオシドリの餌食になってしまうかもしれない。近くに落ちていた棒きれを差し出して救ったところ、オニクワガタのオスだと判明。人生初のオニクワガタは意外なことに水上採集だった。

▲葉の上に止まっていたコエゾゼミ。
▲オシドリの幼鳥のシルエット。
▲湖面から掬って救ったオニクワガタのオス。

*番外編*8月12日-13日 北海道松前町

 今回の北海道の目的のひとつは松前町の白神岬にある啼星小屋を訪問すること。北海道最南端の白神岬と青森県津軽半島の竜飛岬は津軽海峡が最も狭くなっている場所であり、多くの渡り鳥の通過ルートになっている。ここでは道南バンディングチームの方々がボランティアで春と秋に標識調査を毎年継続して実施されている。以前からこの網場のことは話に聞いており、道南に行く機会があったら、ぜひ一度は訪れたいと思っていたのだ。8月だとまだ早いかと思ったら、すでにムシクイの渡りが始まっており、それに合わせて調査も開始しているとのこと。手伝いも歓迎という返事をいただき、一泊の強行軍で行ってみた。

 啼星小屋は想像以上に立派な建物で、作業スペース以外に自炊のできるキッチンや4、5人が寝泊まりできるスペースも確保されていた。バイオトイレも完備されていた。小屋の周りがすぐに網場になっていて便利だが、敷地の外縁には電気柵がめぐらせてある。今回ご一緒させていただいた道南バンディングチームの山本さんに訊くと、北海道最南端のここでもときにヒグマが出没するらしい。したがって見周りのときには持っていくようにと、クマよけスプレーを渡されたのには驚いた。

 13日の5時から10時までの調査で、エゾムシクイ42羽、センダイムシクイ18羽を含む12種81羽を放鳥。一度にこれほど多くのムシクイに接したのは初めてで、得難い体験であった。奄美だとめったにムシクイは捕まらないからなあ。

▲センダイムシクイは黄色みが強い。奄美でときどき捕まるイイジマムシクイに似ている。
▲エゾムシクイはセンダイムシクイと比べると暗色。特に頭部が黒っぽい。
▲敷地内できれいに咲いていたヤマユリの花。

8月26日 宇検村某所

 久しぶりにアマミシカクワガタを発見。シカクワガタ類は東アジアから南アジアにかけて分布するオスの大顎が奇抜な形に伸びるクワガタで、日本では唯一アマミシカクワガタが奄美大島と徳之島に生息している。ただし、このアマミシカクワガタは自然下で出現するのはほとんどが小型個体で、名前の通り鹿の角のように発達した大顎を持つ個体はレアである。今回発見したのもオスだったが、27mmの小型個体。ちょっと見はコクワガタのようだが、前胸部の縁にぎざぎざがあるので、シカクワガタだとわかる。迫力不足の感は否めないが、久しぶりの対面に感激!

▲小さくてもアマミシカクワガタのオス。
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