2013年 9月のフィールドノートから

9月9日-10日 瀬戸内町ハンミャ島

 ハンミャ島は与路島沖にある小さな無人島だが、奄美群島唯一のオオミズナギドリおよびアナドリの繁殖地になっている。このため奄美野鳥の会では毎年夏にこの島で海鳥調査を行っている。去年は山階鳥類研究所の海鳥モニ1000とタイミングを合わせて7月末に行ったが、今年は海が荒れたためになかなか渡れず、結局9月上旬までずれこんでしまった。はたしてオオミズナギドリとアナドリの繁殖状況はどうだろうか?

 加計呂麻島の海上タクシーをチャーターしてハンミャ島に上陸。まずは白砂の浜にテントとタープを張り、ベースキャンプを作ったあと、日暮れまでの時間に、アナドリの繁殖地を下見に行った。アナドリの主な繁殖地は島の西部の岩場である。岩の間のあちらこちらに白い糞が確認できる。どうやらまだ島に滞在しているようでほっとした。

 ベースキャンプに帰って夕食の準備をし、食べているうちに、太陽は与路島の向こうに落ち、周囲が暗くなってきた。昼間は大海原に餌採りに行っているアナドリがぼちぼち帰ってくる時間だ。調査道具を持って再び繁殖地まで移動する。岩場に着いても、ウォンウォンという独特の声があまり聞こえない。あまりいないのかもしれないと心配しつつかすみ網を1枚張って、2時間の調査を開始する。すると矢継ぎ早にアナドリが網にかかる。地面をよたよた歩いている個体は手捕りで捕まえる。結果的に捕獲数は昨年とあまり変わらず、この時期でも調査は可能だということがわかった。

 アナドリの調査を終えてから、オオミズナギドリの繁殖地へ移動。こちらもぼちぼち親鳥が帰還しており、数羽が地面を歩いている。幼鳥と思しき個体も巣穴から出て、うずくまっている。幼鳥のステージはかなり進んでいるようだ。オオミズナギドリも繁殖状況を確認してからテントに戻ったときには23時を越えていた。

 この夜、オオミズナギドリの帰還と旅立ちはひと晩中続いたようで、テントの中にいても明け方まで賑やかな声が聞こえていた。無人島で鳥に囲まれてひと晩を過ごす。なんと贅沢な体験だろう。

▲ハンミャ島北側。かなたにベースキャンプが見える。その右上あたりの斜面がオオミズナギドリの繁殖地。
▲ハンミャ島南側。手前の岩場がアナドリの繁殖地。
▲海から帰ってきて岩場をよたよた歩くアナドリ。
▲捕獲したアナドリには足環を装着してから放鳥する。

9月22日 奄美市ビオトープ

 朝戸峠の探鳥会で30羽強のアカハラダカを観察したあと、大川ダム下のビオトープへ移動。年に一度のビオトープ観察会には例年より多くの参加者が集まっていた。探鳥会から流れてきた人も多く、初顔の方も散見される。ありがたいことだ。

 肝心のビオトープはどうかというと、去年に比べてもさらにカヤツリグサが繁茂し、開水面が狭くなっている。おかげでアメンボは姿を消し、小型で薄暗い場所を好むヒメセスジアメンボばかりになっている。他の水生カメムシ類はヒメイトアメンボ、コマツモムシ、タマミズムシ、トンボはギンヤンマ、ハネビロトンボ、タイリクショウジョウトンボ、ベニトンボ、コシボソトンボ、ゲンンゴロウはトビイロゲンゴロウ、オキナワスジゲンゴロウ、コツブゲンゴロウ、ツヤコツブゲンゴロウなど。脊椎動物としてはメダカの他、リュウキュウカジカガエル、ハロウェルアマガエル、ヒメアマガエルのオタマジャクシが観察できた。

▲上がタイリクショウジョウトンボ、下がベニトンボのそれぞれ下面。大きさだけではなく、複眼の色や脚の色が違う。
▲ビオトープの生き物たち。ヒメセスジアメンボ(長翅型)、メダカ、コマツモムシ、ヒメアマガエルのオタマジャクシなど。