4月15日 奄美市笠利町笠利崎
春の渡り鳥調査のために奄美大島の北端の笠利崎でバンディングをおこなっていると、頭上をいろいろな鳥が通過していく。一番目立つのはサシバで、思い思いに輪を描きながら仲間を募り、10羽前後の小群で渡っていくことが多い。ときにはこの群れにツミやハイタカが交じることもある。ヒヨドリは数十羽の群れになって渡っていくし、ツバメは20羽程度の群れでびゅんびゅん飛びまわっている。空の高いところにはアマツバメが緩やかな群れを作っている。網にかかるのはカラフトあたりから来たと思われるウグイス、本土へ帰る途中のメジロ、完全に遅れを取っているシロハラなど。どの鳥たちもこれから海上の難所を乗り越えていかねばならないのだ。無事に繁殖地まで行きつけますように。
しばらく空を仰ぎ見ていて首が疲れたので、目を地面に落とすと、可憐なピンク色の花が咲いているのに気づいた。コモウセンゴケだ。この食虫植物もいまが花期なんだね。
4月18日 奄美市笠利町万屋
春の渡りが本格化しているはずなのだが、どういうわけか昨日、今日と鳥の姿が少ない。渡り鳥が立ち寄りそうな場所を覗いているのに、ほとんど鳥がいないのだ。奄美で越冬していた冬鳥たちはほとんど姿を消し、もっと南から渡ってくる旅鳥たちはまだ到着していない、そんな空白の時期なのかもしれない。そんな中、ようやく見つけた渡り鳥はヒメコウテンシ。見た目は地味だが、告天子という名前の響きが素晴らしい。農道の脇で一心に草の実をついばんでいる。たんまり栄養を摂るんだよ。
4月25日 加計呂麻島諸鈍
加計呂麻島の水田地帯諸鈍にブロンズトキが入っているという連絡を受け、さっそく行ってみた。これまで沖縄県や佐賀県で数回出ているだけの迷鳥は、すぐに見つかった。チュウサギやアカガシラサギと一緒に休耕田でしきりに餌を探している。思ったよりも小さく、小柄なアカガシラサギよりもまだ背が低い。しかし、なんという色だろう。ブロンズの名のとおり、全身が金属光沢のある赤銅色の羽毛で覆われている。こんな色合いの鳥は他に見たことがない。太陽光が当たると、少し緑がかった色も出て、実に美しいのである。完全に渡りのコースからそれてしまった個体だが、果たしていつまでいてくれるだろうか。