2017年 6月のフィールドノートから

6月16日 トカラ列島臥伏島

 山階鳥類研究所の海鳥モニ1000調査で、5年ぶりに臥蛇島にやってきた。この島はいまでこそ無人島だが、かつては人が住んでいたので、船が接岸できる桟橋がある。ところがその桟橋が途中で崩壊し、3メートルほど水没してしまっているため上陸にはボートが必要となる。なんだかなあという気持ちである。港から集落跡地まではいきなりの急登。登り切ると、大きな動物が音を立てて逃げていく。シカである。臥蛇島にはマゲジカが人為的に導入されており、その数は5年前よりも増えている気がした。そのおかげで下草が少なく、草刈り・藪漕ぎをしなくとも歩けるというメリットもあるのだが……。歩いていると、1羽のサギがふらりと飛んだ。アカガシラサギである。別の場所でも観たので2羽。渡りの時期からはかなり遅れているが、このあとどうするつもりなのだろう。ダイサギやチュウサギの姿もあったが、たぶん繁殖地までは行き着けないのだろう。サギの渡りはダラダラしている。木場立神で営巣しているカツオドリをカウントしていると、指先にカミキリムシが止まった。ここが奄美大島ならばオオシマウスアヤカミキリであるが、トカラ列島なのでウスアヤカミキリだろうか。臥蛇島にはリュウキュウチクが繁茂しているので、食べ物には困るまい。

▲船上からマゲジカを望む。シカがいるのはトカラ列島ではここだけ。
▲集落跡地にいたアカガシラサギ。

6月19日 トカラ列島小島

 小宝島のすぐ隣にある無人島の小島にも5年ぶりの訪問である。ここはトカラ列島には珍しく隆起サンゴ礁でできた島なので船は接岸できず、ボートでの上陸となる。上陸してしばらく海岸近くのリーフを歩いていると、白地に茶色の毛が混じったヤギを発見。トカラヤギだろうか。小島には切り立った断崖があり、その上の平坦な草地でオオミズナギドリが繁殖している。巣穴を数えるために崖を上ると、ビロウ林の中でユウレイランの群落を発見。いまが花期なのか、たくさんの花が咲いていた。断崖の下にはガジュマルやアダンの林があり、そこでもオオミズナギドリが繁殖している。そこへ向かっているとトカゲを発見。宝島や小宝島にはオオシマトカゲが分布していることになっているので、これもオオシマトカゲなのか? 実は小島と宝島には固有のタカラヤモリが生息している(小宝島にはアマミヤモリ)。口之島のトカゲが最近固有種になったという話もあるので、もしかしたら、このトカゲも固有種という可能性はなかろうか? トカラの生物相はわからないことが多い。

▲海岸にいたトカラヤギ。
▲ピンボケですが、ユウレイランの花。
▲小島にいるのもオオシマトカゲなのかしら?
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