2011年オオトラツグミ一斉調査 結果報告

 第18回オオトラツグミ一斉調査結果を掲載しました。延べボランティア調査員375名という大変多くの方々にご協力いただきました。ありがとうございました。確認されたさえずり個体数はまたしても過去最高を更新しました。

オオトラツグミ一斉調査にご協力いただき、有難うございました。

一斉調査実施日:2011年3月20日(日)

 NPO法人奄美野鳥の会では、オオトラツグミの繁殖個体数の増減を把握し記録しておくために、その唯一の生息地・奄美大島でさえずり個体の一斉調査を行っています。1994年から開始して以来、毎年実施してきたオオトラツグミのさえずり一斉調査は、今回で18回目になりました。この一斉調査は、オオトラツグミがさえずる夜明け前の薄暗い時間帯に、林道を歩きながら、さえずりを地図に記録していくもので、データの精度を高めるために短時間に多くの調査員の参加を必要とするものです。

 2011年は一斉調査を3月20日(日)に行い、その前後の補足調査を3月19日(土)、21日(月)に行いました。今回の一斉調査は、奄美中央林道が2010年10月の水害で多くの崖崩れが発生して車が通行できなくなった調査地もあったため、そうした調査地では、安全のためベテランの調査員を徒歩で配置したりしました。また、これらの一斉調査で把握できなかった地域につきましては、3月から4月中旬頃まで奄美野鳥の会の会員を中心に、できるだけ多くの地域で順次、補足追加調査を行ってきました。

 今回のオオトラツグミ調査では、3月20日(日)の奄美中央林道全域や油井岳林道などを含む一斉調査に109名の方々が、3月19日(土)、21日(月)の補足調査には、合計で55名の方々がボランティア調査員としてご参加いただきました。これら三日間の調査の合計では、延べ164名のボランティア調査員に参加していただき、129羽(うち奄美中央林道は、45羽)のさえずり個体数を確認することができました。

 全ての補足追加調査を含めた3月から4月中旬までの調査全体では、総計でさえずり個体数が昨年(294羽)より39羽多い333羽となり、これまでの続けてきた調査で初めて300羽を超える確認数となりました。延べボランティア調査員の総数は昨年 (377名)より2名少ない375名でした。

 さらに、これまでと同じように今回も環境省那覇自然環境事務所や鹿児島森林管理署、鹿児島県大島支庁林務水産課・奄美市・龍郷町・大和村・瀬戸内町のご後援をいただくことができました。また調査員説明会の会場として奄美博物館と瀬戸内町立図書館・郷土館を使用させていただきました。

 ボランティア調査員として調査に参加されたみなさん、ご支援をいただきました行政や諸団体、個人の方、調査資金にご寄付いただいたみなさま方に対し、改めて心から深く感謝致します。ご支援、ご協力ありがとうございました。

特定非営利活動法人 奄美野鳥の会
オオトラツグミさえずり一斉調査実行委員長 高 美喜男

●第18回(2011年)オオトラツグミさえずり調査結果

調査地  283箇所
確認羽数 333羽
調査期間 2011年2月28日~2011年4月15日
調査員  375人(延べ人数)

●オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果の推移
奄美中央林道その他合 計
199024羽1羽25羽
199440羽14羽54羽
199518羽14羽32羽
199618羽11羽29羽
199727羽14羽41羽
199821羽17羽38羽
199944羽28羽72羽
200025羽36羽61羽
200140羽34羽74羽
200240羽37羽77羽
200343羽61羽104羽
200442羽84羽126羽
200568羽103羽171羽
200647羽118羽165羽
200778羽171羽249羽
200847羽180羽227羽
200951羽225羽276羽
201032羽262羽294羽
201145羽288羽333羽
*「その他の観察」は、1990年と1996年は任意観察のみであるが、1994年と1995年、および1997年以降は定点観察も行なった。1994年、1995年、1997年以降に比べて、1996年の観察地点はかなり少なく、見落としが多い。
(1990-1995は、石田ほか1995から抜粋)
 1998年以前は奄美中央林道の里・金作原地区と神屋地区のみの調査であったが、1999年以降は奄美中央林道全域を調査した。
 その他の場所は年々観察地点が増えているため、個体数が増えている。

*表は、Strix vol.15.1997.『オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果(1996年春)奄美野鳥の会』に1997年以降の調査結果を加えて作成。

 今回は奄美大島全域では最高総数333羽を記録しましたが、奄美中央林道の個体数は45羽となりました。昨年は32羽とかなり少なかったので、今年はこれまでの平均的な40羽台の記録数に戻ったことになり、昨年の減少が一過性のものであったことを示唆しています。これまでの記録数全体をみてみると、現時点まで個体数はほぼ安定的に推移しています。