2001年 11月のフィールドノートから

11月8日(木)曇り 龍郷町秋名

 3日の創立記念探鳥会の帰りに秋名に寄った際に、スズメの群れの中にニュウナイスズメが数羽混じっているのを確認した。一応ビデオを回したのだがうまい具合には写っていなかったので、再度挑戦することにした。

 水を張った田んぼにはコサギ、チュウサギ、アマサギ、リュウキュウヨシゴイやゴイサギ幼鳥などのサギ類が目立ち、他にはイソシギ、コチドリ、ダイゼンなどの姿が見える。ブッシュからウグイスの地鳴きが、周りの林からはアカヒゲの囀りが聞こえてくる。秋名では休耕田が葦原になっているところが多く、小鳥たちの格好の隠れ家となっている。こんなところを切り開いてかすみ網をかけたらいろんな鳥が捕まりそうだと、頭の中で来年からのバンディングのシミュレーションをする。スズメたちもこんな葦原に隠れ、安全を確認したら一斉に出てきて、刈り残しの稲穂や草の実をつついているのだ。

 葦原をのぞきながらゆっくり車を流していると、岩元会長の車と遭遇。会長もニュウナイスズメ狙いで来られたとのこと。車を連ねて走ること数分、前方にスズメの群れを発見。30~40羽程の群れだ。あの中に混じっているかもしれないと、車を横づけしてしばし待つことに。スズメたちは葦の中でチュンチュン鳴いている。時折開けた田んぼに出てくるが、上空をサシバやチョウゲンボウが通ると、あわてて葦の中に逃げ込む。こうやって群れのまま行ったり来たりしているため、なかなか全部の構成員を確認できない。ここから見える範囲では全部普通スズメだなと思っていると、後ろの会長が腕を伸ばして一点を指し示している。双眼鏡で確認。いた、ニュウナイスズメだ。オスが1羽にメスが2羽、ハゼの幼木に止まっている。ちょっと遠いのを承知でビデオを向ける。オスはすぐに奥の葦原に隠れてしまったが、メスの姿だけはかろうじてとらえることができた。

 正確に何羽混じっているのかは最後までわからなかったが、このまま越冬して欲しいものだ。

▲一番左がニュウナイスズメのメス。右の2羽は普通のスズメ。

11月10日(土)曇り 笠利町宇宿

 大瀬海岸に行ってみた。カモは増えているが、シギチはあまりおもしろくない。そうそうに切り上げて宇宿の農耕地を丹念に回ってみることにした。

 ジョウビタキの姿が目立つが、それ以外にはあまり鳥が出てこない。風が強いからダメかなと諦めかけたところ、チッと弱い地鳴きが聞こえた。エンベリザだと判断し、しばらく待ってみる。サトウキビのブッシュから出てきたのはミヤマホオジロのオスであった。ミヤマホオジロは森林の鳥というイメージが強いので、こんな農耕地で観るとはちょっと感激。感激しながらビデオを撮影していたら、近くにもう一羽エンベリザが舞い降りた。ミヤマホオジロのメスかなと思って双眼鏡を合わせると、顔つきがまったく違う。そもそも大きいし、なんだこいつは?と判断に迷う。ホオジロでもホオアカでもカシラダカでもオオジュリンでもない。ましてやアオジやノジコではないことは明らか。薄褐色の眉斑と顎線、白いアイリング、胸と脇の茶褐色の縦斑。足は肉色、嘴は灰褐色に見える。こんなエンベリザいたっけと頭のファイルから情報を検索しながら考え込んでいたら、腰が見えた。きれいな栗色の鱗模様! そっか、ようやくわかった。シラガホオジロのメスなのだ。ミヤマホオジロどころではない。なんでキミ、こんなところにいるのと囁きかけながら、ビデオを回し続けた。

▲エレガントなミヤマホオジロのオス
▲珍客到来、シラガホオジロのメス

11月23日(金)小雨 笠利町大瀬海岸

 それまでかろうじてもっていた空模様がついに崩れ小雨が降ってきた。海岸でフィールドスコープをのぞいている身には厳しい。帰り支度をし始めた途端、いままで観ていたヒドリガモが一斉に飛び立つ。おやっと思って空を仰ぐとハヤブサの姿。猛スピードでカモの群れに突っ込むが、今回はカモの反応のほうが早かった。慌てふためいて逃げていく。獲物を得らなかったハヤブサは仕方なしに背後の林へ戻っていく。狩りに失敗した憂さ晴らしだろうか、途中でチョウゲンボウを追いかけ回したりしている。チョウゲンボウこそいい迷惑。

 カモたちが飛んだ跡に目を戻すといつの間にか白い鳥が舞い降りている。カモメみたいだなと思いながら、しまいかけたフィールドスコープで観てみると、冬羽のズグロカモメであった。急いで車からビデオカメラを持ってきて、レンズを向けるのだが、どういうわけかカメラを向けたら飛び上がる。雨が強くなってきた。風も勢いを増している。諦めようとしたら着地する。またカメラを構えると、また飛び上がる。そんな繰り返しでちっともまともな画が撮れない。結局最初に撮影した分が、一番見られるショットであった。

▲悪天候の干潟に降りたズグロカモメ
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