2001年 12月のフィールドノートから

12月8日(土)晴れ 名瀬市古見方

 大川でカイツブリ、バン、オオバン、ハシビロガモが同時に泳いでいる。優勢なのは数が多いバンで、さかんに鳴いたり追いかけ合いをしたりしている。オオバンやハシビロガモは迷惑げに隅に寄り、カイツブリはそ知らぬ顔で潜水する。そんな様子をアオサギが遠くから眺め、横ではタシギが一心不乱に採餌中。空にはリュウキュウツバメが舞っている。冬の大川ののどかなひとコマ。

 小湊集落の農耕地に回るが鳥影は薄い。葦原の中に点在する池の水位が下がり、干上がってしまったものもある。こんなときには水生昆虫を探すチャンス。長靴に履き替え、湿地を歩く。すぐ近くからリュウキュウヨシゴイが飛び出した。人間が侵入するとは思わず、休憩していたのだろう。さて、水生昆虫のほうは芳しくない。アマミアメンボの姿くらいしか確認できなかった。

 車に戻るとタイワンツチイナゴが車のボンネットに乗っていた。日本最大のこのバッタはサトウキビの葉を食害する害虫であるが、大きいためチョウゲンボウが好んで狩るようだ。案の定近くにきれいなオスのチョウゲンボウの姿があった。

▲バッタをよく食べるチョウゲンボウのオス

12月16日(日)晴れ 笠利町大瀬海岸

 大瀬海岸の一斉清掃日。笠利町の主催で大瀬海岸一帯の清掃が行われることになった。奄美野鳥の会からも約20名が参加したが、町の意気込みもなかなかのもので総勢200名を越える大盛況。ボクは長靴を履いて干潟の中のゴミを拾う。空き缶や発泡スチロールのゴミを拾いながらゆっくり浅瀬を歩いていくと、意外と近くまで野鳥に寄ることができる。双眼鏡も持っていないのに、肉眼でメダイチドリの群れに混じるミユビシギや1羽ぽつんと休んでいるクロツラヘラサギが識別できる。

 大人数で一気にやっつけたので、短時間で海岸はすっかりきれいになった。すごくいいことだと思う。ゴミ問題はひとりひとりのマナーの問題に帰結するけれど、こうやってイベント的に清掃作業を行うことで大方のゴミは取り除けるし、みんなの意識向上にもつながるだろう。大瀬海岸に限らず全島に広げたいくらい。でも同時に悲しい場面も目撃した。ひとつは後背地の草刈り。草刈機でものの見事に刈られてしまった草むらはウグイス、アオジ、ノゴマなどが越冬地として利用していた環境だ。人間から見たら草ぼうぼうの見苦しい草むらも大切な役割を果たしていることをどうやって一般人に伝えればよいのだろう。もうひとつはモクマオウの枝打ちと焼却。モクマオウ自体輸入種ではあるが、すでに大きく育ち、、メジロ、ヒヨドリ、マヒワなどの住処としても重要な役割を果たしている。枯れ木や倒木を処理するのはわかるが、生木を切り倒して、焼却までする必要があるのかどうか。オランダ育ちのラーケンさんが「なぜわざわざ木を切るのですか」と悲しい顔で尋ねてきたが、ボクには答えるすべはなかった。

 清掃作業が終わって、人が少なくなると干潟に野鳥が戻ってきた。ツクシガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ。アオアシシギ、ハマシギ、キョウジョシギ。野鳥の会の面々とバードウォッチングを楽しむ。ダイゼン、シロチドリ、コチドリ。カワウ、カイツブリ、ミサゴ。絶対に残していかねばならない自然だ。

 干潮のピークを過ぎても、飛び去ったクロツラヘラサギは戻ってこない。野鳥の会のメンバーも三々五々の流れ解散。みんなが帰って誰もいなくなった干潟に残り、焼き跡の火がちゃんと消えているか見回っているとき、臆病なクロツラヘラサギがようやく戻ってきてくれた。

▲今シーズン初観察のクロツラヘラサギ