2005年 3月のフィールドノートから

3月8日(火) 笠利町アヤマル岬

 数日前の雪が嘘だったかのように暖かい一日。なにか目新しい渡り鳥でも入っていないか、笠利町の農耕地を回ったあと、ひなたぼっこをしながら弁当でも食べようと、アヤマル岬にやってきた。

 ここは蘭の一種であるオキナワチドリの自生地でもあり、ちょうどいまが花期のため、いたるところで可憐な花をつけている。

それを撮影していると、岬の上から人の声が。3人ほどの人がはるか遠くの海のほうを見ながら、なにやら騒いでいる。近づいてみると、クジラが見えるとのこと。イルカならば陸上からも何度か目撃しているが、クジラは見たことがない。さっそく教えられた辺りを双眼鏡でのぞく。なんにも見えない。しばらくそのままのぞく。あ、水煙があがった。潮吹きだろうか……そんなことを考えていると、いきなり海面が持ち上がり、クジラが背中を現す。でかい。思っていたよりもはるかにでかい。さらに見ていると、胸びれを空中に突き出してローリングしたり、尾びれをはねあげたりと、なかなか賑やかである。かれこれ30分近くもクジラのパフォーマンスに見入っていた。

 沖縄の慶良間では1月から3月の間にザトウクジラが現れるという。このクジラもザトウクジラなのだろう。

▲鳥を探しに来て見つけたオキナワチドリ。チドリはチドリでも…。

3月31日(木) 加計呂麻島諸鈍

 アマミヤマシギの全島調査で、川口和範さんと一緒に加計呂麻島に渡る。夜間林道を走っても、どういうわけかアマミヤマシギはあまり多くない。アマミヤマシギは天候その他のコンディションで同じ林道でも観察数が大きく異なる謎めいた鳥である。なので、今回の低密度から即個体数の減少は証明できないが、いずれにしろ数が少ないのは気になる。大いに気になる。

 調査は夜間なので、その他の時間はのんびりとバードウォッチングを楽しむことに。加計呂麻一のバードウォッチング・スポットともいえる諸鈍に行ってみる。耕耘中の田んぼの周りには、コチドリやシロハラクイナ、(ハチジョウ)ツグミやノビタキの姿が。ギュルギュルとムクドリよりも少し甘い声を出しているのは電線に止まったギンムクドリ。ブッシュの中からは北帰行間近のノゴマのぐぜりも聞こえる。うららかな春の農耕地で耳を澄ませていると、タッタッと舌打ちするような声。ムジセッカである。さかんに声を出しながら、草についたアブラムシをついばんでいた。

▲採餌中のムジセッカ
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