2006年 5月のフィールドノートから

5月17日(水) 奄美市金作原

 オオトラツグミといえば、早朝のまだ暗い時間帯に鳴く印象が強いが、この季節には日が高くなっても鳴いていることがある。きょう金作原を訪れたのは10時前、天気もよく曇っているわけでもないのに、さかんに鳴いている。3月頃のさえずりとは意味が違うのだろうか。秋には鳴き声を夕方聞くことも多く、まだまだこの鳥の鳴く習性は謎だらけである。

 道端にはカクチョウランの花がきれいに咲いている。大型で見ばえのする野生蘭だが、幸いこの植物はまだ数も多く、山に入るといたるところで見かけることができる。当たり前のことなのだが、その当たり前の状態を保つことが大切なのだろう。

▲この時期路傍でよく目立つ大型のカクチョウラン。

5月21日(日) 奄美市大瀬海岸

 春の渡りも終盤。ぼちぼちベニアジサシやエリグロアジサシが来ないかな、と大瀬海岸に期待を寄せる。キリキリキリっと特有の高い声をあげているのはコアジサシで、その群れの中を悠然と飛んでいるのはクロハラアジサシ。波打ち際にはハジロクロハラアジサシの姿もうかがえる。奄美の海の夏の主役、ベニアジサシはまだのようだ。

 遠くにクロツラヘラサギの幼鳥が2羽並んで休んでいる。1羽には両足にブルーのリングが装着されており、昨年韓国で標識された個体だとのこと。黄海に浮かぶ故郷の島まで急いで帰る気はあまりないのか、嘴を背中に突っ込み、ひたすら寝てばかりである。その近くに白鷺が1羽。コサギ大だが、冠羽が複数出ているのでクロサギの白色型かなと思い、スコープをのぞく。いや違う、カラシラサギだ。ずいぶん久し振りの対面に、心が躍る。

▲頭がぼさぼさのカラシラサギ。目先のブルーがおしゃれな感じ。

5月28日(日) 奄美市八津野

 ザトウムシの食事風景に出合った。森の掃除屋と呼ばれるザトウムシが奄美に何種類いるのか知らないし、目撃した個体の種名もたぶんギンボシザトウムシだとは思うが自信はない。ともかくこのザトウムシ、一心不乱にミミズを食べている。主に肉食で、昆虫やミミズ、貝類などを捕食するというザトウムシだが、こうやってミミズを貪り食う光景を目の当たりにすると、なにか異星人同士のバトルを見ているような慄然たる気持ちになる。森にはどこに行ってもザトウムシがいる。動物性のものばかりではなく、植物性のものも食すらしいので、ザトウムシが森の中で果たしている役割は実に大きいはずである。もっとメジャーになってもいいのに。

▲この華奢な体でよくもとうならせられる大食漢ぶり。
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