2006年 4月のフィールドノートから

4月2日(日) 大和村フォレストポリス

 オオトラツグミのさえずり一斉調査は2週間前に終わったが、一斉調査でカバーできなかった地点は奄美野鳥の会のメンバーでこつこつと補足調査を行っている。その補足調査も終盤となり、本日は大和村の未調査地区をカバーした。

 オオトラツグミの鳴き声はトラツグミの鳴き声とはまるで異なっている。トラツグミのヒィーンと聞こえる単調な声ではなく、大型ツグミ類特有のキョロリンという節回しの入るいかにもツグミ然とした声なのだ。この種の声を出す鳥で奄美大島で繁殖する種はオオトラツグミしかいないので、普段は聴き間違えることもないのだが、春先のこの時期になると渡り間近のシロハラやアカハラがぐぜりはじめるので注意が必要である。けさもアカハラがさかんにさえずりの練習をしていた。夏場に聴くキョロンキョロンツィーという明確な声ではなく、妙におどおどと声を震わせながら、しかも途中で鳴くのをやめたりするので、なんの鳥が鳴いているのか一瞬戸惑ってしまう。

 アカハラの姿を確認しようと車を停めて双眼鏡をのぞいていると、前方のヒカンザクラの枝が大きく揺れた。実ったサクランボを目当てにズアカアオバトがやってきているのだ。巨体にもかかわらず、桜の葉とよく似た色合いのために簡単にはわからない。見事な保護色だと思う。

▲ヒカンザクラの実を食べにきたズアカアオバト。周りの緑に溶け込んでいる。

4月16日(日) 龍郷町龍郷

 マルバチシャノキにおびただしい数の虫が集まっている。オキナワアオバホソハムシがマルバチシャノキの葉に群がり、まさにムシャムシャという音が聞こえてきそうな勢いで食べているのだ。木の上部には葉質が食べつくされ、葉脈だけになった葉が無残な姿をさらしている。緑の葉が残っているところは下部だけなので、この木が丸裸になるのも時間の問題だろう。おそるべし昆虫パワー。ちなみにこのオキナワアオバホソハムシ、オキナワカミキリモドキにそっくりである。毒のあるカミキリモドキにベーツ型擬態をしているのであろう。

▲マルバチシャノキの葉に群がるオキナワアオバホソハムシ。一本の木に何万といて、凄まじい勢いで葉を食っている。

4月23日(日) 奄美市-大和村-宇検村

 虫友数名とクロウサギの糞調査。林道上を歩き、クロウサギの糞を見つけるたびに崩して中に糞虫がいないかどうか確かめるという、このテの虫に興味がない人が聞いたらあきれ返って卒倒してしまいそうな地味な調査である。ある虫が目的なのだが、さすがに超珍品だけあってそう簡単に夢はかなわない。全長20キロほどに及んだ第1回糞虫調査は徒労ということばがしっくりくる結果に。

▲見つかるのはほとんどアマミセマダラマグソコガネばかり。これはこれで貴重な虫なのだが・・・。