2002年 5月のフィールドノートから

5月2日(木)晴れ 龍郷町奄美自然観察の森

 12日の「全国野鳥保護の集い」の探鳥会の準備のために勉強会を開く。この森で観られる鳥のことは大体わかっているつもりだが、植物となるといきなり自信がなくなる。そこで、本日は原さんに講師になっていただき、遊歩道から観られる主な植物について教えてもらった。さっそく園の入り口で、ギョクシンカ、ヤンバルセンニンソウ、オオムラサキシキブ……よしよし、OK。園に入って、シマイズセンリョウ、シシアクチ、ショウベンノキ……うーん、だんだんわからなくなってきたぞ。遊歩道を進み、シロミミズ、シマミサオノキ、ヒメユズリハ……もはや、最初の方の木はすっかり忘れている。さらに、ハクサンボク、ミミズバイ、ヤンバルアワブキ……完全に自信喪失。そうだよな、奥深い植物の世界が一日やそこらでわかるはずがない。欲張らずに確実にひとつずつ覚えることにしよう。ということで、出口近くのフウトウカズラとフトモモだけは覚えたのだった。

 勉強会が終わり、駐車場に戻ってくると、脇にアカメガシワの花が咲いており、匂いが漂ってくる。近づいてみると、いたいた、オオシマオオトラフコガネだ。シイの花についていないかと、以前から探していたのだが、意外にもこんなところに! 昆虫と一緒に覚えると、植物も簡単に覚えるのだがなどと思いながら、デジカメで撮影した。

▲美しい訪花性昆虫のオオシマオオトラフコガネ。アカメガシワの花の上で交尾中。

番外編 5月6日(月)~10日(金) オーストラリア

 オーストラリアに住む妹が男の子を出産した。そこで、孫の顔を見たいという母親を連れて渡豪することになった。役目は母親を無事に送り届けることなので、目的地のシドニーに着いてしまえば、あとは時間を持て余してしまう。その暇を利用して、シドニー近辺の鳥を観てみることに。

 驚くのは住宅地でも都市の真ん中の公園でも、鳥の姿がとても多いこと。そして、鳥たちがほとんど人を恐れないこと。人を恐れないというとカラスかドバトくらいという日本とは、まるで様子が違う。論より証拠、実際の画像を見てもらえばわかるでしょう。

Carlingfordの住宅地にて

 妹の住む町の近くで撮ったもの。誇張ではなく、朝夕は鳥の声がうるさい。ワライカワセミやフエガラス、ゴシキセイガイインコ、カバイロハッカたちの声の大きいこと、賑やかなこと。

▲オーストラリアといえば、忘れてならないのがワライカワセミ(Laughing Kookaburra)。ヤマセミほどもある巨大なカワセミが毎朝夕、けたたましく“笑う”。
▲オーストラリアにはオウムやインコの類が多い。庭木に色鮮やかなゴシキセイガイインコ(Rainbow Lorikeet)が群れている。他にもキバタン(Sulphur-crested Cookattoo)ややモモイロインコ(Galah)の姿もよく見かける。
▲奇妙な声で鳴くカササギフエガラス(Australian Magpie)。オーストラリアには白黒ツートーンの見慣れない鳥が多い。フエガラス( Currawong)、ツチスドリ(Magpie-lark)、モズガラス(Butcherbird)などなど、いずれも日本には近縁種のいない鳥のグループ。

Royal Botanical Gardenにて

オーストラリア最大の都市シドニーのど真ん中に広大な公園がある。オフィスワーカーや学生たちが思い思いに休憩したりスポーツしたりしている傍らには多数の鳥たちが群れている。

▲古代エジプトでは知恵の神様といわれたクロトキ(Sacred Ibis)がオーストラリアの公園には普通にごろごろといる。そればかりか人に近づいてきてエサをねだったりもする。名前に反して(sacred=神聖な)俗っぽい鳥だ。
▲ケリの仲間のズグロトサカゲリ(Masked Lapwing)。黄色い頬垂れがとてもよく目立つ。

Bicentennial Parkにて

 シドニーオリンピック会場跡に隣接する湿地の公園。レインジャーもいて、丁寧に自然や鳥のことを教えてくれる。もっとも、英語に不案内なためひとりで回るしかなかったのだが。

オーストラリアヘラサギ(Royal Spoonbill)。顔面に黄色い斑があるが、ちょうど目の上でまるで眉毛のような位置にあるため、近くで眺めるとぼけたような表情に見える。
▲中央の巨大な鳥はオーストラリアペリカン(Australian Pelican)。こんな巨鳥がシドニーの街中を飛んでいたりするのにはびっくりする。手前にはオーストラリアセイタカシギ(Black-winged Stilt)が、背後にはアオクビコガモ(Chestnut Teal)が休んでいる。

5月22日(水)小雨 自宅

 去年の10月14日のこのコーナーの続報。秋におそらく終令幼虫じゃないかという大きさにまで育っていたタイワンカブトムシがようやく蛹化した。結局持ち帰った5頭のうち、蛹になったのは2頭のみ。餌条件がよくなかったのであろうか。ともあれ、ここまでくればもうじき成虫が現れるだろう。

 タイワンカブトムシは自然と分布を拡大しつつある昆虫であるが、昨今のクワガタムシ・カブトムシブームで、輸入された外国産のクワガタやカブトが野外に逃げ出して、在来種と交配したりするケースが増えている。これにより在来種の遺伝的攪乱が起こる可能性があり、心配である。奄美でもダイエーなんかで、普通にアトラスオオカブトムシが売っていたりする。そのうち、野外で目撃したりする事態が発生するかもしれない。移入種問題はこんなところでもまき起こっているのだ。

▲蛹室の中でじっと羽化を待つタイワンカブトの蛹。頭に小さな角が見える。