2018年 8月のフィールドノートから

8月4日 龍郷町今井崎

 オオジョロウグモが目立つようになってきた。日本最大の造網性クモであるオオジョロウグモの巣に使われる糸は強靭で、小鳥や小型のコウモリならば、下手に引っかかってしまうと脱け出せなくなることもある。実際に私も網に引っかかったスズメの幼鳥を救出したことがあるが、いまのところ雀の恩返しはない。そんな網なので、車のフロントガラスにくっついたらぺったりとこびりつくし、歩いていて顔から突っこもうものなら気色悪いことこのうえない。ということで、車で網を壊さないように慎重に進んでいると、かなり大きな黒色型のメスを見つけた。メスには黄色と黒の基本色から、茶色型、黒色型と色彩変異があるが、なかでは黒色型が最も精悍でかっこよい。なぜか巣はぼろぼろであり、なにもかによって壊された跡なのか、これから造ろうととしているのか判然としない。

 よく見ると、メスから離れた場所にメスよりもはるかに小さなオスがいた。メスに食べられないように、静かにようすをうかがっているようだ。さらにオスの近くには、オオジョロウグモの巣に居候をして、エサを横取りしたり、食べ残しをちゃっかりいだたいたりするアカイソウロウグのペアもいた。オオジョロウグモのメスが造る大きな巣にはいろんな他のクモたちが共生しており、ひとつの生態系が形づくられている。

▲網を補修しようとしているのか、オオジョロウグモのメス。
▲オスは離れた場所にいた。
▲オスの近くにはアカイソウロウグモのメス(腹部の丸いほう)とオスも。

8月6日 大和村湯湾岳周辺

 午前7時、所用で湯湾岳近くまで来たところ、道路脇からまだ幼い子ネコが3頭、茂みに飛びこんでいった。そのまま逃げたかなと思うと、うち2頭は少し離れたところから、こちらをじっと見ている。どうしたんだろうと車を停めると、先ほど子ネコたちがいた辺りから、よろよろと小さな動物がこちらへ近づいてくるではないか。なんとアマミトゲネズミである。こんな明るい時間に遭遇するのは初めての経験である。事情がわかった。どうやら子ネコたちはアマミトゲネズミを見つけていたぶっていたところだったようだ。そこへ私の車が急にやってきたものだから、慌てて獲物を放り出して茂みへ隠れたのだろう。元気に跳ねることのできないアマミトゲネズミをとりあえず保護するために近づくと、もう一体、きれいに中身を食われて皮だけになったアマミトゲネズミの死体を見つけた。保護したアマミトゲネズミも病院に連れていく途中で絶命した。実はつい先日も、首輪をつけた飼い猫が山の中でケナガネズミを襲ったのを目撃したばかりだし、そのときには近くで耳カットをされたノラネコも徘徊していた。奄美大島ではいま、ネコの問題がかように広がっているのである。

▲茂みの向こうからこちらをのぞく2頭の子ネコ。
▲子ネコの視線の先にはよろよろで跳ぶことのできないアマミトゲネズミが。
▲さらにその近くには哀れな姿になったアマミトゲネズミが。
タイトルとURLをコピーしました