4月1日(日)晴れ 笠利町大瀬海岸
ここに来る前に寄った川上集落で、サシバが渡っていくのを目撃した。養鶏場に何か珍しい鳥でも来ていないかと期待したのだが、その期待は外れ先を急ごうとして見回すと集落の周囲の林のいたるところにサシバが集結している。しばらく観察していると、風の具合がよくなったのか、五月雨式に飛び立ってはおのおの円を描きながら天に昇っていく。数えたところ19羽。見る見る間に肉眼では確認が難しいほどの高度を稼ぎ、そろって東のほうへ流れるように去っていった。喜界島上空を通るコースか? その後、どこに渡っていくのだろう。
大瀬海岸もシギチの渡りで賑やかになってきた。数はさほど多くないが、多種の鳥が干潟で餌を採っている。大ぶりで目立つのは、ダイシャクシギとオオソリハシシギ。オオソリは夏羽で赤く染まった個体もいるし、動きがぎこちない個体もいる。おかしいと思いスコープで観ると、左足の腿部から先が欠損している。どんな災難に見舞われたのかわからないが、これではこの先、生き延びていくのは難しいかもしれない。
長い足で優雅に歩いているのは、セイタカシギにアオアシシギ、それにアカアシシギもいる。その脇をずんぐりしたウズラシギやオバシギが通り過ぎ、キアシシギ、タカブシギ、イソシギ、ハマシギなどもいる。あの顔が赤いのはサルハマシギだ。遠くに1羽のみ確認。チドリはメダイチ、シロチ、コチ。そのチドリたちより小さな体でちょこまか動いているのは、トウネンとオジロトウネン。オジロトウネンは完全な冬羽で上面がぬめっとしたグレー、黄緑っぽい足もトウネンとは大きく異なる。
その他の鳥、カルガモ、オナガガモ、ヒドリガモ、タシギ、ダイサギ、アオサギなど。
4月15日(日)晴れ 龍郷町秋名
午前中、オオトラツグミを狙う真木広造さんにお会いした。あの真木さんをして、まともに撮れたのは図鑑『日本の野鳥590』に掲載したカットくらいのものと言わしめる難敵オオトラツグミであるが、さすがに今回は真木さんの粘り勝ちであったようで、デイライトでばっちりな写真が撮れたとのこと。満足顔の真木さんとしばしおしゃべりをしたあと、秋名へ向かった。
先週に続き、今週も田植えの最中で、多くの人出がある。これではまだ渡り鳥も落ち着いて休めないが、それでも先週よりは鳥影が濃くなってきており、ムナグロ、コチドリ、ウズラシギ、クサシギ、タカブシギなどのシギチの姿が所々に見える。畑にはノビタキの姿も。一方、あれほど多かったサシバやアオジ、ウグイスは数が激減している。間違いなく春の渡りが始まっている。これからが楽しみな季節だ。
夏羽に色づいたアマサギに近づこうと潜み足であぜ道を歩いていたら、目の前1mくらいのところからセッカが驚いて飛び出した。が、なぜか飛び立つわけでもなく、悠長にホッピングをしながら、しかも途中で餌を探しながら逃げていく。けがしているのかなと危ぶんでもう一歩近づくと、無事に羽ばたいて逃げていった。そうこうするうちに最初の目当てのアマサギも逃げてしまっていたが、ま、いいか。
4月18日(水)晴れ 龍郷町秋名
昨日からの雨が午後過ぎにあがったので、秋名へ出かけた。渡りの季節、雨の後は要注意。悪天候で渡りきれなかった鳥たちが溜まっている可能性があるからだ。
期待しながら水田を中心に探すが、先日いたムナグロやウズラシギは見当たらず、コアオアシシギが1羽寂しげに餌を採っている。いまひとつ賑わっていない。今日はダメかと車の速度を上げると、道路脇から1羽の鳥が飛び出した。飛び方から、ヒバリか? いや、小さい。声もヒバリほど強くない。慌てて車をとめて、その鳥が降り立つのを待つ。頭上を大きく旋回して、もといた場所に降りてきた。双眼鏡でのぞく。
ラッキー、ヒメコウテンシだ! さかんに動いて餌を探している。ビデオで追っかけるが結構すばやく敏感なので、なかなか思うように撮れない。ともあれ久しぶりの対面である。
やっぱり、この時期は気が抜けないなと思いつつ、帰りに龍郷町浦の湿地を通ると、きれいに夏羽に色づいたアカガシラサギ1羽を発見。こちらは警戒心が強くビデオに収めることはできなかった。
4月26日(木)晴れ 笠利町宇宿
サシバも大方渡ってしまったのでミフウズラが出やすくなるんじゃないかと、夕刻笠利町のサトウキビ畑に出向く。空港の裏あたりから這うようなスピードで車を流していくと、前方に猛禽の影。ハヤブサだと認識したときには、ヤツはもう車の横手の畑につっこんでいる。そこで休息していたムナグロの小群に襲い掛かったのだ。ムナグロのほうが一瞬気づくのが早かったようで、ハヤブサのアタックは空振りに終わった。
サシバどころかハヤブサがうろついているんじゃ、ミフウズラは出てこないかもと思っていると、道路をシロハラクイナが横切る。こっちを気にしながら、一歩ずつそっと足を出すのが面白いが、そんなにのんびりしていると、ハヤブサの餌食になっちゃうぞ。
さらに進むと白鷺の群れがある。アマサギとチュウサギからなる100羽程の群れだ。日没が近くなり、ねぐら入りで集まってきたようだ。畑で採餌しているもの7割、木に止まって眠る準備に入ったもの3割という感じ。
その手前の畑のスプリンクラーの上に黒くて尾の長い鳥がいるのを発見。オウチュウではないか。あわててビデオを回し始める。二股に分かれて先が跳ね上がった長い尾羽が特徴。じっと待ち伏せしていたかと思うと、餌の昆虫を見つけるとそれを追いかけて地面すれすれをかなりのスピードで飛ぶ。昆虫の動きに合わせて急停止したり急旋回したり。なかなかアクロバティックな飛行術は、長い尾が軌跡を描いてとても華麗だ。空中で餌を捕まえたのか、スピードを落としてふわふわと近くの電線に向かう。と、そこにはもう1羽、別のオウチュウが。2羽はその後もつかず離れず行動をともにしていた。
4月28日(金)小雨 名瀬市古見方
この春はアカガシラサギの目撃情報が多い。自分自身、秋名と浦できれいな夏羽の個体を観ているが、今朝は住用村の市でも目撃した。サギ類は警戒心が強い鳥だが、アカガシラサギは特にその傾向が強く、往々にして飛び立ってはじめて気づくことが多い。
連休の初日というのに、天気はあまりよくない。小雨が降ってきたし鳥の出も悪いので市から早々に引き返す。しかし、このまま家に戻るのもしゃくなので、ついでに古見方に寄ることにする。
大川の堤防の上を走っていると、ヒクイナが目の前を横切っていった。先日秋名で鳴いているのを耳にしたが、姿を観るのは今シーズン初めてである。川の中にはダイサギ。その横に、あ、ムラサキサギ。
アオサギが青くないのと同じくらい、ムラサキサギは紫ではない。全身褐色なので、枯れた葦原なんかに入ってしまうと非常に見つけづらいのだ。対岸からしばらく観察していたが、のろのろと首を伸ばしたり、歩を進めたり。なんとものんびりしている。