2012年 6月のフィールドノートから

6月21日 瀬戸内町油井岳周辺

 6月上旬と中旬はほとんど奄美にいなかった。その間に梅雨や台風で雨が続き、またしても林道が大きく崩れたようだ。ここ数年、奄美の豪雨被害は半端ではない。2010年10月の集中集中豪雨以来、奄美の山はいつどこで崩れてもおかしくなった。困ったことだ。

 とある荒れた未舗装の林道を走っていると、目の前から尾羽の白の目立つ鳥が飛びだし、前方のリュウキュウマツを回りこむようにして枝に止まった。肉眼ではなにか判然としなかったので、双眼鏡でのぞいてみると、オオトラツグミの幼鳥である。巣立って間もないなのだろう、尾羽は短く、嘴はまだ黄色い。自力でエサを採ることが
できるのかどうか微妙な大きさだが、巣立ちビナとしては遅いほうだと思う。

 その後舗装された林林道上で、ミミズがのたうちまわっている場面に出くわした。顔を近づけてみると、体にコウガイビルがまきついているではないか。扁形動物であるコウガイビルによる、環形動物ミミズの壮絶な捕食シーンである。コウガイビルの口吻は腹部にあるというのでよく見ると、なるほどお腹のあたりから膜状に広がった
半透明の組織がミミズにまとわりついている。しばらく観察していると、ミミズは暴れるのをやめおとなしくなった。どうやら、コウガイビルが補殺に成功したようだ。じっくり時間をかけて溶かしながら吸収していくのだろうか。なんともグロテスクな光景であった。

▲オオトラツグミの巣立ったばかりの幼鳥。雨覆の羽縁が白いのもよくわかる。
▲コウガイビルによるミミズの捕食シーン。ミミズの息の根を止めると、コウガイビルは頭部をもたげた。

6月30日 奄美市住用町某所

 ふた月も続いた梅雨がようやく明けた。朝からすっきり快晴なので、出かけないテはあるまいと、某所へランとムシを探しに行った。梅雨の降雨で林道はまた通行止めになっているところが多く、かろうじて通れたとしても相当の悪路。遠回りしたり慎重に走行したりで、おかげで現地への到着時間が1時間も遅れてしまった。
 そこからは徒歩で森に入る。目当てのランはなんとか観ることができたが、目当てのムシのほうは見つからない。でもまあ、一勝一敗でよしとしよう。

▲目当てのランはこちらのナゴラン。もう花のピークは過ぎ、香りは薄れていた。
これは目当てのムシではない、オオシマアオハナムグリ。赤色タイプのメスのようだ。
▲これも目当てのムシではない、ネブトクワガタのオス。一心に樹液を吸っていた。