2017年 10月のフィールドノートから

*番外編*10月5日 静岡市悪沢岳

 奄美に暮らしていると、ときおり無性に高い山が恋しくなる。ということで、上京のついでに南アルプスの悪沢岳に登ってきた。

 10月の南アルプス、それも赤石・荒川界隈は人が少なくていい。標高1100mの椹島から、3141mの悪沢岳の頂上まで登りつめ、2500mの千枚小屋まで戻ってくるまで約10時間かかったが、その間に出会った登山客はたったの4名、宿泊した千枚小屋の客は私を含めてわずかに3名だけ。中高年の登山ブームや百名山人気はどこ吹く風という感じである。登山口の椹島付近はシラカバやミズナラなどの広葉樹が多いが、登るにしたがってコメツガ、シラビソ、オオシラビソなどの針葉樹が目立つようになってくる。ところどこにベニテングタケやトリカブトなどの有毒植物の姿も。千枚小屋付近はダケカンバやナナカマドの葉が色づいて綺麗だった。標高2880mの千枚岳あたりからハイマツ帯に移り、イワヒバリやホシガラスなどの高山鳥が見られるようになる。たしか20年ほど前に赤石岳に登ったときにはライチョウを見た記憶があるが、残念ながら今回は確認できなかった。

▲ミズナラの葉とどんぐり。これはまだ青いうちに落ちているが、左のほうには熟した実もある。
▲有名な毒キノコ、ベニテングダケ。少し古いのか、色あせてきている。
▲こちらは猛毒のトリカブトの一種の花。ヤマトリカブトかなあ。
▲人を恐れず足元までやってきたイワヒバリ。
▲ハイマツの根本で餌を探すホシガラス。

10月20日 奄美市名瀬小湊

 小湊の水辺に謎のシギがいるとの情報を得て、観にいった。写真のシギがそれである。背中の模様などはタカブシギっぽいが、それにしては脚が長く見える。コキアシシギだろうか? 図鑑ではタカブシギとコキアシシギの識別ポイントとして、脚の長さと色はもちろん、眉斑が目の後方まで伸びるかどうかと翼の先端が尾の先端よりも長いかどうかが挙げられている。眉斑も翼の長さも観る角度によって違って見えるのだが、全体的にはタカブっぽいかなあ。交雑個体とかだったら、もはやお手あげだが。

▲コキアシシギっぽいタカブシギ。