2009年 5月のフィールドノートから

5月6日 奄美市某所

 晴天続きのゴールデンウィークの最終日、とある渓流を訪ねてみた。清らかな水に陽光が落ち、きらきらと輝いてまぶしい。水は清冽で、足をつけると爽快な気分が立ち昇ってくる。渓流の脇にオキナワトゲオトンボの奄美亜種を発見。イトトンボよりもひと回り大きく、山間の薄暗い沢を好むトンボである。トンボの撮影に夢中になっていると、清流を横切って泳ぐものの姿を発見。ガラスヒヴァである。かなり流れが急なのに気にもせず、泳いでいく。カエルやイモリが好物のこのヘビは泳ぎが得意なのである。巧みに身体をくねらせて泳ぐ姿は、ウナギなどの泳法とあまり違わないようである。

▲オキナワトゲオトンボのアップ。そっと近づくと顔の前1センチまでカメラを近づけることができた。
▲清流を泳ぐガラスヒヴァ。ちゃんと頭を水面から上に持ち上げている。

5月10日 奄美市大瀬海岸

 春の渡りも終盤戦。シベリアムクドリの情報を得てさっそくやってきたものの、そもそもコムクドリの群れを見かけない。連日の快晴で、鳥たちの出入りはかなり激しいようである。大瀬海岸には何種ものシギが入っている。ウズラシギ、アオアシシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、オグロシギ、チュウシャクシギ、ダイシャクシギ、ホウロクシギ……シベリアオオハシシギもいたと聞くが、見当たらない。どうも今日はシベリアと縁がないなあ。そんな愚痴をひとりごちていると、遠方をコアジサシがひらひらと舞っている。今季の初認である。

 白いサギはコサギがチュウサギかと思ってスコープをのぞくとカラシラサギだった。エレガントな姿で餌を探している。そこへもう1羽、白いサギが飛来。こちらは少々体が重そうなクロサギの白色型。水面ぎりぎりまで身をかがめ、水中を透かし見るようにしているのが印象的だった。

▲冠羽と胸の飾り羽が美しいカラシラサギ。シラサギ類のなかでも最も優美な鳥だと思う。
▲クロサギの白色型。翼を広げ気味にして陰を作りながら、水面下の餌を真剣に探している。

5月20日 奄美市古見方

 シロノセンダングサの葉にホソヘリカメムシがついている。この昆虫はマメ科やイネ科作物の害虫として有名だが、キク科植物からも吸汁するのだろうか? あまり考えたことがなかったが、今後はセンダングサをよく注目しておこう。ホソヘリカメムシは幼虫がアリ擬態、成虫(の飛翔時)がハチ擬態していることで有名である。特に若齢幼虫はアリそっくりである。最強の昆虫に擬態していれば、弱きカメムシも安心。

▲アリそっくりなホソヘリカメムシの若齢幼虫。横から見ると口器の形でカメムシだとわかる。
▲こちらがホソヘリカメムシの成虫。飛ぶとアシナガバチのように見える。