2009年 8月のフィールドノートから

8月19日 瀬戸内町油井岳

 調査で油井岳の林床を歩いていると、禍々しい外見の大型キノコを発見。全体が真っ白で開ききった傘の上部には棘状の突起が出ている。シロオニタケというキノコらしい。言いえて妙のネーミングである。有毒で知られるテングタケの仲間というから、手を出さぬのが無難であろう。さらに歩くと、今度は小さなハエがたかったキノコが。見た感じはイタリアをはじめとしてヨーロッパで好まれるポルチーニ(ヤマドリタケ)に似ているが、亜高山帯の針葉樹に生える茸が奄美の照葉樹林中にあるはずもない。結局調べてもよくわからなかった。8月は大型のキノコがたくさん出る時期である。

▲傘の部分がもろいシロオニタケ。自重で横倒しになっていた。
▲謎のキノコ。虫の食痕がたくさんあるってことは、それだけおいしいということのように思うのだが……。

8月23日 龍郷町秋名

 ぼちぼちシギチの渡りの季節である。秋名の水田地帯にハリオシギでも来ていないかと探しに行ったが、見つかったのはタカブシギとセイタカシギだけ。もう少しあとだろうか。稲刈りの終わった水田にはバンの親子の姿が目立つ。まだ黒い幼羽に覆われたヒナが一生懸命親のあとを泳いでついていく姿は見ていて愛らしい。。

▲バンの親子。親鳥は巣材をくわえている。巣を補修するのだろうか。

8月30日 奄美市住用町八津野

 夏も終わりに近づき、オオジョロウグモの姿を目にする機会も増えてきた。造網性のクモでは日本最大で、メスは大きくなると大人の掌ほどの大きさになる。その網糸は強度が高い上に粘つくので、顔にまとわりついたり車のフロントガラスにくっついたりすると、始末におえない。ジョロウグモと同じようにオスは小さく、通常はメスに食べられないように、網の隅っこで居候しながらじっと交尾のチャンスをうかがっているのだが、今日見つけたオスは果敢にも性成熟した大きなメスに取り付いていた。ひっきりなしにメスの体の上を動いているのは、襲われないように警戒しているつもりだろうか。果たしてこのオスは無事に自分の子孫を残せるか? 頑張れ、オス!

▲オオジョロウグモのメスの腹部にしがみつく赤茶色のオス。この身体の大きさの違い!