2011年 11月のフィールドノートから

11月3日 奄美市大瀬海岸

 奄美野鳥の会は私が奄美に移住するはるか昔、1988年の文化の日に創立された。以来、毎年11月3日は創立記念日として大瀬海岸で探鳥会をやっている。今年は23回目の誕生日ということになる。ちょうど潮が引き、探鳥会にはもってこいのコンディションだが、なぜかシギチがいない。それもそのはず、干潟の中心付近にハヤブサがでんと居座っている。獲物を捕食しているようすはない。狩りに失敗して、呆然と立っているという感じなのがおかしい。しばらくして、そのハヤブサが飛び去ると、徐々にシギチ達が戻ってきた。ムナグロ、メダイチドリ、シロチドリ、キョウジョシギ、トウネン、ヒバリシギ、ハマシギ、ミユビシギ、アオアシシギ……中にやや大型で、長い嘴をせわしなくを海につっこんでいるシギがいる。オオハシシギだ。奄美で観るのは初めてかもしれない。よく観察すると、嘴で海中を探り、小さなカニかなにかを引きあげて食べている。海中で探すより、引いた泥の上で探すほうが容易に思えるのだが、なぜなのだろう。

▲さかんに海中の餌をさぐるオオハシシギ。
▲なかなか頭をあげてくれない。

11月7日 龍郷町秋名

 ちょっと仕事に空きができたので、秋名へ行ってみた。稲刈りが終わった田んぼになにか入っていないかと思ったのだが、いるのはタカブシギとセイタカシギだけ。冬鳥の小鳥たちもまだほとんど来ておらず、鳥影が薄い。こりゃあだめだと帰ろうとしたところ、一羽のカラスが他のカラスにしつこくつきまとわれている場面に遭遇。カラス界のイジメかなと双眼鏡で観ると、からまれているのはミヤマガラスだった。ミヤマガラスは奄美では何年かに一度単独または数羽で入る。今年は久々の飛来だが、これだけハシブトガラスに追い回されていたら、越冬せずに別の場所へ逃げていくかもしれない。ミヤマガラス御難である。

▲ハシブトガラス(上)から執拗に追い回されるミヤマガラス(下)。

11月19日 奄美市万屋

 名古屋帰りで奄美空港前の有料駐車場に預けていた愛車をピックアップし、そのまま空港付近の農耕地を回ってみる。この付近の農耕地は冬場、タヒバリ類やホオジロ類が入るのだが、まだ小鳥たちはほとんど渡ってきていないようだ。ところどころに農業用水をためた小さな溜池がある。カモなどが入ることもあるのでのぞいてみると、キンクロハジロやヒドリガモにまじって、なんと冬羽のレンカクが入っているではないか。このレンカク、実は10月末に発見され、その後しばらくの間は観察されていたのだが、上記11月3日の探鳥会のときには姿を見なかったので、もういなくなったとばかり思っていた個体である。ひと月ほども小さな溜池に居つくとは珍しい。レンカクといえば足指が長く、忍者よろしく水草の上を悠然と歩く姿がおなじみだが、この溜池にはあいにく水草のたぐいが生えていない。腹までしっかり水につかったレンカクはまるでヒレアシシギのような姿であった。このままひと冬越してくれたらいいのに。

▲自慢の脚が見えていないので、一瞬レンカクだかなんだかわからない。

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