2019年 6月のフィールドノートから

6月16日 奄美市金作原

 環境省のモニタリング1000森林準コアサイトの金作原では年に4回、ピットフォールトラップで地上徘徊性昆虫の調査をおこなっている。今年2回目の調査に出向いたところ、目の前の踏み分け道から大きめの鳥が飛び立った。近くの枝に止まったので顔を向けてみると、オオトラツグミである。のんびりミミズでも探していたところを突然人間に邪魔されて戸惑ったようなようす。慌ててリュックからカメラを取り出して撮影する。距離は近いのだが、あたりはまだ薄暗い。せっかくのチャンスにもかかわらずブレブレの写真しか撮れなかった。ピットフィールトラップにかかったアマミサソリモドキなどを回収していると、いつもの居場所からアマミイシカワガエルが顔をのぞかせていた。

▲近いけれども暗くてピンボケのオオトラツグミ。
▲穴から姿を見せるアマミイシカワガエル。昼間見ると皮膚の色が黒っぽい。

6月16日-17日 請島

 アマミヤマシギの調査のために請島を訪れた。まずは車を借りて林道の下見。この島の名前がついたウケユリはもう花期の終わり。「みのり会」の方々の手で手厚く護られているウケユリの最後の1輪になんとか間に合った。生息地が網で囲まれているのがなんとも痛ましいが、「みのり会」の代表の方の話では、人の出入りが極めて限られている請島でも監視の目は十分とはいえず、いまもまだ植物の違法な盗掘などが確認されているとのこと。であればこういう措置も仕方ないのであろうか。請島にはルリカケスも生息しているが、密度は決して高くない。今回最初に確認した個体は、自動車に轢かれた死体だった。死因はロードキルかどうかわからないが、交通量の少ないこんなのどかな島で車の下敷きになってぺしゃんこになった死体を見ると複雑な気持ちになる。請島ではソテツの栽培が盛んだが、そのせいかソテツを食害するクロマダラソテツシジミがいたるところにいる。これほどの数が乱舞しているのは初めてみた。夜明台から月を望んだときにはあいにく、雲の中。それでも月明かりが海を照らす幻想的な景色を楽しむことができた。

 夜間の調査では繁殖期の満月という絶好のコンディションだったせいもあり、予想以上にたくさんのアマミヤマシギを観察できた。幼鳥も多く、この島がアマミヤマシギにとって重要な繁殖地のひとつであることが確認できた。翌日、再び林道をたどって大山へ。沢に下りると、アマミルリモントンボがいたのでカメラのレンズを向ける。すると視野の中になにか動く物が……体長1.2mほどのハブではないか。正直ビビって、すぐに退散。帰り際、夕日台に寄ってみると、なんとウグイスがさえずっている! 録音はするもどうしても姿は現さず。越冬個体が帰りそびれたのか、喜界島や沖永良部島の繁殖個体が分散しているのか? いずれにしろ、実に興味深い。

▲請島のウケユリ。今年の最後の1輪。
▲車に轢かれ無残な姿となったルリカケス。
▲やたらとたくさん乱舞しているクロマダラソテツシジミ。
▲調査中に出会ったアマミヤマシギの幼鳥。
▲夜明台から満月を望む。あいにく雲に隠れたが、静謐な世界。
▲アマミルリモントンボの下に邪悪なハブの頭が……。
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