2020年 9月のフィールドノートから

9月10日 龍郷町戸口川

 一時は生息数の減少が心配されたカワウはこのところ増加傾向が続いていて、日本各地で希少な淡水魚の捕食が問題視されるまでになってきた。奄美大島でも冬鳥として渡来するカワウによるリュウキュウアユの食害が懸念されている。まずは実態を知ることが大切ということで、今年はリュウキュウアユが生息するどの川にどの程度のカワウが渡来しているのか、その実態を調べてみることになった。調査は渡来前から開始ということで、さっそく9月に第一回目をやったのだが、当然といえば当然の結果で、どの川にもカワウのカの字もない。この日は龍郷町の戸口川にやってきたが、もちろんここにもまだカワウは渡来していない。河口付近の岩礁で繁殖していたエリグロアジサシはもう帰ってしまったのか、やはり姿はない。全般的に鳥影が薄いが、川の中州でキアシシギがさかんに動き回って餌を探していた。秋の渡りの最中なんだと思い知る。

 ふと道端のセンダングサに目をやると、スズメガが高速で飛び回って吸蜜している。オキナワクロホウジャクのようだ。スズメガとハチドリが似ているのは収斂進化の一例か?

▲さかんに餌を探すキアシシギ。
▲スズメガの胴体はエビにも似ている。

9月20日 奄美市名瀬大川ダムビオトープ

 奄美野鳥の会主催の観察会で久々に大川ダムのビオトープへやってきた。この日は観察会のダブルヘッダーで、まず7時30分から朝戸峠でアカハラダカの観察会をおこなったあと、10時からビオトープでの観察会。アカハラダカのほうは開始直前に17羽ほどが至近距離で見られて、幸先がいいなと思っていたところ、8時頃から雨が降り出し、それがやまずに途中で切り上げることになった。その後も雨勢は強まるばかりで、ビオトープ観察会は中止かなと思っていると、幸いにも開始直前に雨が上がり、無事に実施することができた。

 先日の台風10号で奄美も一気に秋の気配が濃くなり、気温も涼しくなってきた。そのせいか、ビオトープにもトンボの姿が少ない。ギンヤンマ、タイリクショウジョウトンボ、ベニトンボ、ハラボソトンボ、ヒメトンボ、それに数種のイトトンボ類。日本で2番目に小さなトンボ科のヒメトンボが健在だったのは喜ばしいこと。土手の上からトンボやオタマジャクシを観察したあと、池の中の生き物を網やざるですくう。オキナワスジゲンゴロウ、ウスイロシマゲンゴロウの成虫、トビイロゲンゴロウの幼虫に続いて、コガタノゲンゴロウの成虫が捕まえられたのは、嬉しい。ゲンゴロウは水中の生態系の豊かさを示す指標となる昆虫だ。トビイロやコガタノなどの大型種が生息できる環境はそれだけ豊かな池ということだ。願わくば、ヒメフチトリゲンゴロウが戻ってきてくれますように。

▲ハート型になって交尾するリュウキュウベニイトトンボ。
▲奄美で一番小さなイトトンボ、ヒメイトトンボのオス。
▲オキナワスジゲンゴロウは個体数が多かった。