2023年 7月のフィールドノートから

7月15日 奄美市笠利町土盛海岸

 奄美大島北部の土盛海岸は海水浴スポットとして島外の観光客に人気だが、近くの岩礁でアジサシが繁殖しているため、毎年奄美野鳥の会では「立ち入り禁止」の看板と、防護策を設置している。今年は6月10日に設置し、その際にはコアジサシしか渡来していないようだったが、その後ベニアジサシも渡ってきたので、観察に行ってみた。岩礁の手前が砂地になっており、そこでコアジサシが繁殖している。概ね20巣くらいだろうか。すでに大きくなってさかんに動き回っているヒナも確認できる。その背後の岩礁ではベニアジサシが抱卵をはじめている。奄美はこれから台風シーズン。毎年思うのだが、もうすぐ巣立つであろうコアジサシはともかく、ベニアジサシはなぜこんな時期に台風で波をかぶりやすい南西諸島の岩礁で繁殖するのだろう。繁殖成功率はとても低い。無事に巣立ってくれることを祈るのみ。

▲上空を飛び回るコアジサシ
▲もう自由に歩き回れるコアジサシのヒナ
▲抱卵中のベニアジサシ
▲ベニアジサシのバトル。いったいなにがあったのか?

*番外*7月20日 大分県久住山

 45年ぶりくらいに久住山に登った。天気はあいにくの曇で視界が悪かったが、のんびり登山を楽しんだ。ミヤマキリシマの時期には一面ピンクのじゅうたんを敷き詰めたようになるそうだが、さすがに今の時期には花期は終わっている。今一番盛りなのは真っ白なアジサイの仲間、ノリウツギ。ところどころにヤマアジサイの花も見かける。山頂に着くと小さめのコガネムシがたくさん飛び回っている。ヒメスジコガネだろうか。コガネムシ類はよく似ていて、よくわからない。復路、沓掛山まで戻ったところで大きな猛禽が1羽飛び出した。イヌワシだ! 九州では際めて少ないと考えられるが、幸運にも姿を現してくれた。目の前を悠々と滑空し、涌蓋山のほうへ飛び去った。下山後、長者原のタデ原にいくと、ハンカイソウが咲いていた。漢の時代、劉邦に使えた武将、樊噲に因んだ、堂々としたキク科の科の花。

▲霧に隠れる久住山山頂部。姿を望めたのはこの一瞬だけ。
▲登山道脇のヤマアジサイの花
▲山頂で休んでいると、コガネムシが止まった。ヒメスジコガネかな?
▲九州では幻の鳥となったイヌワシ。スマホしか持っていなかったのが、つくづく残念。
▲長者原のハンカイソウ

7月29日 大和村フォレストポリス

 フォレストポリスの水辺の広場でトンボなどの昆虫の観察。この時期一番多いのは、アオビタイトンボ。オスの頭部にはその名のとおり青いスポットが確認できる。ベニトンボやタイワンウチワヤンマも多い。産卵を観察できたのは、アオビタイトンボとタイワンウチワヤンマとコシブトトンボ。ここ水辺の広場では20種類以上のトンボが確認され、止水性のトンボにとって楽園となっている。ヒメガマは抽水植物だが、結構葉がかじられていて、その犯人はタイワンハネナガイナゴのようだ。バッタ類はあまり水を気にせず、葉に取りついている種類も多い。水辺では捕食者のアオメアブが待ち構えているし、ナガコガネグモも巣を張って待ち伏せしている。トンボはトンボ同士で喰らい合うし、水辺の生態系の生存競争はなかなかに熾烈だ。

▲ヒメガマの花穂に止まるアオビタイトンボのオス
▲ヒメガマの花穂に止まるタイワンウチワヤンマのオス
▲ヒメガマの葉をかじるタイワンハネナガイナゴ
▲ヒメガマの葉で獲物を待ち構えるアオメアブ
▲巣を張って待つナガコガネグモ