2月7日 大和村フォレストポリス
はやくもヤツガシラが飛来しているとの報を受け、湯湾探鳥会の行きがけにフォレストポリスを訪れた。小雨の中、公園の芝生でのんびり餌をとる姿をすぐに発見。至近距離から観察できた。ヤツガシラは春も秋も渡りの時期がやたらはやい個体がいる。せっかちな個体なのだろうか。折しもヒカンザクラが満開で、メジロやヒヨドリが蜜を求めて群れている。よく見ると、メジロは留鳥の亜種リュウキュウメジロと本土から冬季渡ってくる亜種メジロが混在している。亜種メジロは渡る前にたくさん栄養をとり、脂肪を蓄えなければならない。この時期にふんだんに咲くヒカンザクラは彼らにとってかっこうの栄養源となることだろう。
*番外編*2月25日~2月28日 ニュージーランド ミルフォード・トラック
ニュージーランドに初入国。「世界一美しい散歩道」と称され、長年の憧れだったミルフォード・トラックについにやってきた。世界中からトレッカーが集まる人気コースであるうえに、1日に入山できるのがガイドなし40人、ガイド付き50人の90人だけという極めて厳しい入山規制を課しているため、日本から予約を入れたのは約一年も前のこと。荷物を担いで3泊4日で54キロ。この道を歩くのをどれだけ楽しみにしてきたことか。
ミルフォード・トラックの始点はテ・アナウ湖の対岸。ここまでは船で渡るのだが、強い雨のため本来乗るはずの午前中の船が欠航となるという波乱の幕開け。午後の船でなんとか渡ることはできたものの、道路は水溜りだらけで、あっという間に登山靴の中まで浸水という憂き目にあう。初日からテンションだだ下がりであるが、それでもクリントン川に浮かぶParadise shelduck(クロアカツクシガモ)や近くに現れたTomtit(ニュージーランドヒタキ)の姿に心を癒される。
2日目も雨がやまない。それどころかますます勢いが強くなり、ついには雷雨となってしまった。水嵩も増え、ところどころ膝丈ほどの高さとなる。周囲の木にはコケやシダが着生しまくり、温帯雨林の様相を見せている。通常でもここは多雨地帯なのだ。雨はあたりまえと開き直れば、まったく人を恐れないBlack Robin(ニュージーランドコマヒタキ)やWeka(ニュージーランドクイナ)を楽しむ余裕も出てくる。とはいえ雨はやむ気配がない。振った雨は周囲の山の四方八方から直接流れ落ち、無数の滝となってわれわれの歩く谷へと流れ落ちてくる。ともすると身の危険を感じるほどである。と、行く手にレンジャーが現れ、この先の川は水量が多いので渡れないとのこと。かといって、ミルフォード・トラックは一方通行なので前の山小屋まで引き返すわけにもいかない。どうするのだろうと思っていると、なんと救難用のヘリコプターが登場。待機場所から次の山小屋までピストン輸送してくれるとのこと。かくして、生涯ではじめてヘリコプターに乗ることになったのであった。
3日目はようやく雨が上がった。早朝から山小屋の外で「ケアー、ケアー」とけたたましい声が聞こえてくる。その名もマオリ語でKea、日本名はミヤマオウムだ。この鳥は異常なまでに好奇心が旺盛で、人の持ち物を片っ端から嘴でついばんで破壊してしまうという。案の定、山小屋の前に飛来した2羽のケアは登山靴やレインコートなど、外に置きっぱなしにしてあった人の所持品をさっそく弄びはじめたのだった。今日は峠越え。曇り空の中、2時間ほど登ると、ミルフォード・トラックの最高地点マッキノン峠に出た。ここではMoutaindaisyやForsteraなどの高山植物が見られ、山の上部に張りついた氷河もはっきり確認できる。そこからは下り道。アーサー川沿いに一気に下り、本日の山小屋に到着。
最終4日目にして、ようやく太陽に光を拝むことができた。早朝に山小屋を出発し最長の18キロを踏破する工程だが、ずっとなだらかな下り坂なので、思いのほかラクである。タスマン海に面するアーサー川沿いは、前半のクリントン川とは違い、ヘゴ類など大型のシダが多い。一瞬奄美の風景にも似ているように思うが、ここは南緯55°、北海道の稚内と同じ緯度だと思うと不思議な気持ちになる。林には大型のNew Zealand pigeon(ニュージーランドバト)や美しい声で鳴くBellbird(ニュージーランドミツスイ)、Fantail(ハイイロオウギヒタキ)などが舞い、川面にはBrown Teal(チャイロコガモ)、New Zealand scaup(ニュージーランドスズガモ)などが浮かんでいる。旅の最後は、ミルフォード・サウンドというフィヨルドの最奥部に出た。ここから小さなボートで対岸の港まで運んでもらい、波乱に満ちた3泊4日のトレッキング旅は終わったのだった。