2014年 11月のフィールドノートから

11月5日 奄美市笠利町宇宿漁港

 秋の渡りがさかんになってきている。宇宿漁港には常連のムナグロに交じって、なにやら大きな鳥の姿が。タゲリである。近づくと真っ先に飛んで逃げた。この鳥は見た目も優雅だが、ふわりふわりと飛ぶ姿もなかなか優雅だ。マミジロタヒバリの奥にいるのはイソヒヨドリかなと双眼鏡で覗いてみると、ホシムクドリだった。冬期にときどき見かけるが、たいがいはムクドリの群れに単独で交じっている。ホシムクドリだけで、しかも3羽一緒なのははじめて観た。

▲3羽で行動をともにするホシムクドリ。
▲さかんに歩き回り、餌を探していた。

11月23日 瀬戸内町請島

 奄美野鳥の会では珍しく請島で探鳥会を企画した。請島には古仁屋から町営船「せとなみ」が出ている。平日は一日1往復だけなのだが、日曜祝日はこれが2便になる。したがって第1便で渡り、第2便で帰ってくれば、5時間ほど請島に滞在できることになる。幸い天気もよく、気候のよい秋の一日をのんびり請島で過ごせると思っていたら、なんと23日、24日の両日は「せとなみ」は機関整備のために欠航、海上タクシーの代船での運航となるという。それも1便だけになり、時間的な余裕は請島の請阿室集落にかろうじて1時間半だけ滞在できる分しかない。秋の行楽シーズン、しかも3連休に運休とはどういうことだろう。過去にはGWに車で加計呂麻島に渡ろうと思ったら、町営フェリー「かけろま」が運休ということもあった。瀬戸内町は観光客のことをいったいどのように考えているのだろうか? 人が動く時期に町営船を運休する意味がまったくわからない。世界遺産で観光客を奄美に呼ぼうという動きがあるが、町の担当者がこのレベルの認識では到底観光業で食っていくなんて無理だろう。

 急きょ滞在時間が短くなり憤懣やるかたない思いだったのだが、請阿室の集落に着くなりツツドリの幼鳥がわれわれ一行を歓迎してくれた。なかなかサービス精神の旺盛な個体で、あまり人を恐れず、肉眼でも十分観察可能な距離まで近づいてくれる。おかげですっかり機嫌が直るのだから、バードウォッチャーというのは単純な人種である。その後も山からアカヒゲの声が聞こえたり、今季初めてアカハラやツグミの姿が確認できたりで、慌ただしいながらもなかなか充実した探鳥会となった。次回はもっとのんびり訪れたい島だ。

▲公民館の門柱にとまるツツドリの幼鳥。