2007年 6月のフィールドノートから

番外編:6月1日 屋久島安房

 山階鳥類研究所の調査の手伝いで屋久島に来ている。同じ鹿児島県の南の離島でありながら、屋久島と奄美大島は驚くほど違う。屋久杉で有名なように、屋久島には杉の巨木がいくらでも自生しているが、奄美には植樹したもの以外杉はない。屋久島の森にはサルやシカが普通にいるが、奄美にはいない。かわりに奄美には普通のイノシシはこちらにはいないそうだ。屋久島にはコマドリやミソサザイが留鳥としているが、奄美にはいない。奄美では数多い夏鳥であるサンコウチョウやアカショウビンは、屋久島では数が少ないなどなど、数え上げたらきりがない。

 虫も同じ。ウラジロエノキの葉に見慣れないガの幼虫がついていると思ったら、リンゴドクガだった。北海道から九州まで分布しており、屋久島が南限だとか。触らなくてよかった。

▲全身が長い毛で覆われているが、これが毒を持っているのかな。

6月23日(土) 大和村フォレストポリス

 ひと月近くも奄美を離れていると、やはり重畳たる常緑広葉樹の森が恋しくなる。翌日の自然観察会の下見を兼ねて、フォレストポリスを散策。かつては人が住み、茶畑が広がっていたという福元盆地は、いまでは人工的な池やキャンプ場に姿を変えている。奄美の高地にはまとまった広さの止水域に乏しいので、このような環境は大切である。ここでしか目にできないような水生昆虫も多いのである。特にトンボの種類の多さは特筆もの。年間何種類くらいのトンボが生息しているのか、ちゃんと調べてみる必要がある。

▲アマミサナエのオス。あまり多くない種類だが、住用川上流のここではよく見かける。