2015年 10月のフィールドノートから

10月17日 奄美市笠利町笠利崎

 9月に続き、笠利崎で秋の渡り鳥バンディング調査。秋の渡りはだらだらと続くが、まだ鳥の姿は多くない。捕まるのはほとんど留鳥ばかりでちっとも渡り鳥調査にならない。そうぼやいていると、1羽のムシクイがかかった。メボソムシクイ上種のようだが、果たしてなにか? 計測すると、サイズは明らかに小さく、P10の長さは最長PCよりも短い。どうやらコムシクイのようである。奄美大島では過去に二度(2012年9月、2013年9月)、いずれも高知山でコムシクイが捕れており、これで3羽目となる。渡りの実態がわかっていない鳥だが、この時期かなりの数が奄美を通過しているのは間違いないように思う。

▲メボソムシクイ上種のこの鳥は?
▲P10の長さがPCよりも短いことがわかる。

10月25日 徳之島天城町

 今日は徳之島で探鳥会。台風25号による波が太平洋側でまだ高いということで、フェリーは条件付き運航となった。思ったほど揺れはしなかったが、フェリーは太平洋側にある亀徳港ではなく、東シナ海側の平土野港に入港。港でレンタカーを借りる手続きをしていると、フェリーの車両デッキからオリーブドラブに彩色された無骨な車両が続々と出てくる。なんでも陸上自衛隊旭川駐屯地の部隊(第2師団)が徳之島で演習を行うらしい。はるか北の大地から遠路はるばるご苦労なことである。平土野から探鳥会の集合場所である天城町総合運動公園はすぐ近くである。集合時間よりも30分以上前に到着すると、先ほど港で見送った自衛隊車両が運動公園の駐車場にずらっと停まっている。なんともものものしい雰囲気だが、そんな空気もなんのその、探鳥会はなかなかに盛況である。というのも、今回は徳之島で活躍されているNPO法人虹の会さまと共同開催ということで広くお声かけくださったようなのだ。ありがたい限りである。

 まずは浅間海岸をのぞく。干潮で水の引いた広大な干潟には、お馴染みのコウノトリ(J0066)の他、クロハラアジサシ、キアシシギ、ハマシギ、トウネン、メダイチドリ、シロチドリ、クロツラヘラサギなどの姿がぽつりぽつりと見える。干潮のせいか、ウミアメンボ類は見つけられないが、その代わりシオマネキ類が巣穴から出てエサを採っている。オキナワハクセンシオマネキにヒメシオマネキにベニシオマネキ。それぞれ好む土質が違うため、居場所が微妙に異なっているのが面白い。この海岸の主といっても過言ではない徳之島在住のY田さんによると、もう少し気温が高ければ、リュウキュウシオマネキやヤエヤマシオマネキも出現するという。さながらシオマネキ天国である。

 ひととおり浅間海岸を観察したあとは、運動公園へと移動。なぜかアダンではなく植えられている小笠原原産のタコノキではコシジロキンパラが、少年野球をやっているにもかかわらず野球グラウンドではムネアカタヒバリやムナグロが観察できた。Y田さんの話ではひと月ほど前からヤツガシラが滞在し、たまにカラムクドリやホシムクドリも姿を現すというが、残念ながら確認できず。ただでさえ日曜日で利用客が多いうえに、ましてや陸自の皆さまがおいでとあっては、恐れをなしたのかもしれない。

 探鳥会終了後は徳之島在住の理事であるK村と一緒にウンブキ、小島の鍾乳洞跡、明眼の森などを回り、日帰り徳之島ツアーは終了。よく晴れた秋の行楽日和を堪能した。

▲クロハラアジサシの冬羽。ときおり飛び立ち、エサを探していた。
▲ヒメシオマネキとベニシオマネキ。ベニシオマネキの密度が濃い。
▲ウンブキ名物の(?)アカヒゲ。ガジュマルの実をくわえている。