2013年 12月のフィールドノートから

*番外編*12月31日 長崎県諫早干拓

 12月12日に喜界島で標識されたコウノトリが見つかった。今年の4月10日に豊岡の郊外で生まれ、6月24日に巣立ったオスの幼鳥J0067だとわかった。野生下で生まれた個体が喜界島まで飛来したのは吉報。そのうち奄美大島にも姿を現すだろうと予想していた矢先、12月26日にさっそく現れた。帰省するために飛行機を待っていた奄美空港でコウノトリ飛来の第一報を受けたのだが、さすがに引き返すわけにもいかず、自分の目で見るのは諦めた。喜界島に現れたのと同じ個体かと思いきや、鳥仲間の発見者が撮影した写真を見てみると、あにはからんやこちらはJ0066ではないか。J0067と同じ巣で同じ日に生まれたオス幼鳥だ。J0067よりもふつか早い6月22日に巣立って以降、8月21日に静岡県掛川市、10月30日に宮崎県延岡市、11月23日に兵庫県丹波市に出現したあと、遠路奄美大島まで渡ってきたようだ。今後、南西諸島への分散事例も増えてるかもしれない。

 豊岡産のコウノトリに心を引かれながらも、実は狙っている鳥があった。長崎の諫早干拓に12月上旬から出現している2羽のナベコウである。コウノトリはかつて12月の五所川原で遭難しそうになりながら観たことがあったが、ナベコウはこれまで二度見逃しているぜひとも見たい鳥だったのだ。幸い年末は長崎県に用事があったのでチャンスかと思ったのだが、そうは甘くない。28日の午後、29日の午前に行ってみるも、事前に教えてもらっていた場所にはいない。地元の方の話では昼間はかなり行動範囲が広がるらしい。なにしろ広大な諫早干拓である。端から端まで探していては1日では足りない。諦めるしかないかと思いつつも、最後の望みを託して大晦日の夜明けの時間帯に合わせて行ってみた。ねぐらから飛来するのではないかと考え、徐々に白んでいく空を双眼鏡で舐めるように見ていくが、視野に入ってくるのはチュウヒとトビばかり。こうなれば農耕地を丹念に探すしかないと思ったとたん、車の前を大きな黒い鳥が横切っていく。なんといのまにか至近距離に近づいてきていたらしい。付かず離れずの距離で2羽、一年の最後にライファーをゲットすることができたのであった。

▲早朝の農耕地を悠然と歩くナベコウ。