2016年 5月のフィールドノートから

5月25日 龍郷町自然観察の森

 自然観察の森が最も賑わうのは毎年3月末から5月初めだろうか。この島に生息するさまざまな固有種、固有亜種の鳥たちが一斉に繁殖の時期を迎えるのがその頃なのである。5月も下旬となったこの時期、森はかつての賑やかさが嘘だったかのように静まり返り、ときおり響いてくるアカヒゲの美声も心なしか哀愁を帯びているかのように感じる。それでも森の中にはいろいろな鳥たちがひっそりと暮らしている。梢の間をルリカケスが声もなく移動したり、サンコウチョウが舌足らずな声でひかえめにさえずっていたり……。森を一望しようと、ドラゴンとりで(という名の三層になった木造の展望施設)に行ってみると、なにかの鳥の影が動いた。双眼鏡で確認すると、オーストンオオアカゲラのメスである。とりでの最上部の横木に止まって、のんびりと羽づくろいなどをしているようである。もしかしたら至近距離まで近づけるかもと思い、静かに階段をのぼる。さすがにオーストンオオアカゲラは人の気配に気づき途中で飛び去ったが、そこには大きなペリットの置きみやげが。オオアカゲラのペリットを初めて確認した。

 森を展望してから駐車場の戻る途中で、今度は一心に枯れ木でエサを探すオーストンオオアカゲラのオスを発見。ドラミングもしなければ鳴き声もあげないオーストンオオアカゲラは存外目立ちにくいものだ。

▲ドラゴントリデの最上部で羽づくろいをするオーストンオオアカゲラのメス(わかりにくくてすみません)。
▲上のメスが吐き出したと思われるペリット。
▲別の場所で一心にエサを探すオーストンオオアカゲラのオス。