2017年 1月のフィールドノートから

1月7日 沖縄県名護市多野岳

 年初の恒例となった山階鳥類研究所の沖縄での冬鳥モニタリング調査に今年も参加させていただく。この冬は暖かく、年が明けても異常なくらいの気温の高さが続いているという。事実、多野岳のステーションの周囲ではなんとオオシマゼミが鳴いているではないか。暖かい日が続いたのでこの時期まで生き延びたのか、あるいは連日の暖かさで新たに羽化したものか? どちらにしろ1月初旬にセミの声を聞くというのは驚きだ。ステーションの建物を開けると、大型のゴミムシの死骸が転がっていた。奄美には分布していないオオスナハラゴミムシのようだ。いつかしら紛れ込んで、出られなくなったのだろう。網場を作るために積んであった落葉をどかすと、アマミタカチホヘビが丸まっていた。こんなに暖かいのに休眠しているとは、どれだけ寒さんに弱いのだろう。この個体、これまでに見た同種と比べて極端に頭部が黄色い。沖縄島のアマミタカチホヘビがすべてこうではないという話なので、これが年齢による変異なのか個体変異なのか、気になるところ。存分にヘビを観察してから網を張ったが、暖冬のせいか、冬鳥の姿が少ないのが気になる。かなり時間をもてあます調査になりそうな予感……。

▲建物の床に転がっていたオオスナハラゴミムシの死骸。
▲積んであった草の下で丸まっていたアマミタカチホヘビ。

1月16日~18日 喜界島

 16日。沖縄での冬鳥モニタリング調査を終えて、喜界島へ向かう。今年はこの島を何度か訪問し、ある鳥の生態を探る予定。奄美空港で関東から来られたH氏、Y氏と落ち会い、喜界空港へ。空港の外では地元のI氏が待っていて、リュウキュウアサギマダラの集団越冬地があるので、連れていってくださるという。アサギマダラの集団越冬ならば奄美大島でも見慣れているので、あまり期待していなかったが、実物に接してびっくり。500頭ほどのリュウキュウアサギマダラがスギの葉先からびっしり垂れさがっているのだ。今日は気温が低いため、手を差し伸べても逃げようともせず、まるでオブジェのようだ。奄美大島でもこれほどの規模の越冬集団は観たことはなく、しばし見入ってしまった。

▲びっしりと連なったリュウキュウアサギマダラ。

 17日。一転してチョウも活動できそうな暖かさ。案の定、喜界島名物のオオゴマダラが悠然と舞い、ランタナから吸蜜している。鳥たちの活動もさかんで、目当ての鳥もそこかしこで姿を確認できた。今回の来島の目的は喜界島全島でのこの鳥の生息密度をおおまかに探ること。少なくとも調査にたえうる程度には生息していることは確認できた。島ではサトウキビの収穫が始まっており、刈ったサトウキビを積んだ大型トラックと頻繁にすれ違う。サトウキビの延びた穂に、小さな鳥の姿を発見。セッカだ。サトウキビの穂先に付いた小さな種を一生懸命ついばんでいた。

▲ランタナから吸蜜するオオゴマダラ。
▲サトウキビの穂先の種をついばむセッカ。

 18日。I氏によると12月にはケアシノスリらしき鳥が出ていたという。なるほど喜界島の情報を発信している某ブログには、それらしき猛禽の写真が掲載されている。I氏に案内を頼んで現地を訪れてみると、ケアシノスリらしき個体はおらず、ノスリの若鳥と思われる個体がスプリンクラーに止まっていた。この個体の他にも最低1羽は別のノスリがいたので、この冬の喜界島はノスリの当たり年なのかもしれない。ノスリを観察したあとは、研究対象の鳥をもう少し探してから奄美大島の自宅への帰路に着いた。

▲虹彩が淡い黄色なので、若いノスリだと思われる。
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